「チケットレス」に踏み切れないJR九州 事前予約しても発券で混雑…背景にある“地域事情”とは

そもそも「きっぷ要らず」が普及している時代 JR九州なぜ未導入

 利便性を考えれば、JR東日本やJR東海のインターネット予約のように紙のきっぷを発券しなくても、「登録した交通系ICカードを改札口でタッチして乗車できる」チケットレスサービスの導入が抜本的解決かもしれません。しかし、JR九州は「検討はしているが、すぐに導入する計画はない」として消極的です。なぜでしょうか。

 その理由の1つとして考えられるのは、地域によるスマートフォン普及率の違いです。総務省が5月に発表した「令和4年通信利用動向調査」によれば、スマホをインターネット端末として利用している個人の割合を都道府県別に見ると、1位東京都、2位千葉県、3位奈良県、4位大阪府、5位神奈川県の順ですが、九州勢では福岡県が17位でようやく顔を出します。一方で低いほうから見ると47位秋田県、46位岩手県、45位山形県、44位宮崎県、43位熊本県と、東北と九州の各県が並びます。

 JR東日本におけるチケットレス利用の実態は首都圏が中心で、東北での利用があまりなくても影響は少なそうですが、JR九州が自社エリア内にチケットレスサービスを導入しても首都圏や関西圏ほど活用されないかもしれません。チケットレス化にかかるシステム開発費を考えると、躊躇せざるをえないのでしょう。

 一方で、販売窓口や指定席券売機が混雑している理由について、JR九州は「インターネット予約が想定よりも早く進んでいるため」と説明していました。そう考えると、九州でもスマホをネット端末として使う人の割合がさらに増えて、将来チケットレス化が導入される機運も高まってくるのかもしれません。

【了】

【画像】えっ…!これがJR九州の「新しい観光列車」です

Writer: 土方 揚(経済ジャーナリスト)

1963年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。 出版社に入社し経済誌や投資情報誌で編集・記者を長年務める。 幅広い産業の取材や海外駐在経験を元に できるだけ広い視野に立って記事を書くことを心がけている。

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