フェリーじゃないよ「RORO船」新造船が続々? トラックの受け皿とエコ両立の工夫「刃物のような船首」とは
新造のRORO船「ふがく丸」が進水。フェリーとともに、トラック輸送からの転換の受け皿となる船ですが、環境性能も両立させなければなりません。そのひとつの工夫が、上から下までストンと垂直に落ちるようなラインの船首です。
ひさびさ! 新造「RORO船」進水
三菱重工業下関造船所で2023年10月31日、三菱造船がフジトランスコーポレーションから受注した新造RORO船「ふがく丸」の命名・進水式が行われました。同船は三菱造船が発足してから初めて進水するRORO船で、他船社を含めたRORO船の建造自体も およそ6年ぶりとなります。三菱重工は陸上のトラック輸送から海上輸送への転換を見据え、RORO船のさらなる受注につなげる構えです。
RORO船とは、トラックやトレーラーが自走して乗り込むことができる貨物船のことで、全国にはフェリー航路とともにRORO船の航路が張り巡らされています。今回、進水した「ふがく丸」は1997年に竣工した同名船「ふがく丸」(1万1573総トン)を代替するために建造されました。荷主は三菱自動車とみられます。
全長165m、全幅27.6m、総トン数は1万3000トン、航海速力は21ノット(約39km/h)です。積載車両台数は乗用車換算で既存船より300台以上多い1754台。船幅を拡大したうえ、トレーラー区画の構造を工夫して柱をなくすことにより、トレーラースペースに余裕を生み、積み付け効率を向上させました。これによりトレーラーシャーシ50台と乗用車1511台を同時に積載するだけのスペースを確保しています。
外観上の特徴はなんといっても、上から下へそのままストンと落ちるような形の垂直ステム(船首)です。これは航路や接岸する港の都合から船体サイズに制限のある中で、車両の積載台数を増やしつつ、波の抵抗を大きく減らす工夫のひとつ。推進性能が高まることで省エネルギーと環境性能の向上へとつながり、電子制御主機関などを合わせて運航時のCO2排出量を約30%削減できます。
三菱重工グループが手掛けた商船では小笠原海運の「おがさわら丸」や東京九州フェリーの「はまゆう」などが垂直ステムを採用していますが、フジトランスの保有船では初の形状です。
機関室内には近年、客船を中心に広まっている陸上電力受電装置を搭載。各港は港内のCO2排出ゼロを目指してカーボンニュートラルポート(CNP)と呼ばれる取り組みを進めており、将来的に陸上側へ設置される給電装置に接続することで船内の発電機を止め、接岸中のゼロエミッション化を実現します。CO2排出量は約30%削減を達成しています。
一方で主機関は重油焚きのディーゼルエンジンを搭載しており、LNG(液化天然ガス)やエタノールといったGHG(温室効果ガス)の排出を大幅に削減する燃料には対応していません。これはLNGなど新燃料に対応したバンカリング拠点の整備が進んでいないためで、今後、内航海運のカーボンニュートラル化に向けた課題となるでしょう。
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