“100万円で新車が買える”時代はなぜ終わった? 昔は「クラウン」も160万円台だった! 装備なくすと逆に高くなる驚きのパラドックス
かつては高級車でも装備を削ぎ落とした「激安グレード」が存在しました。なぜ今はその選択肢が消えたのでしょうか。裏には意外な製造の事情がありました。いったい、どういうことなのでしょうか。
装備を外すと逆に高い「引き算」のパラドックス
かつて、新車のグレード選びには、今では考えられないほどの“自由”がありました。その象徴ともいえるのが、1991年に登場したトヨタ「クラウン」です。
当時のラインナップを見ると、最上級グレードの「ロイヤルサルーンG」は約400万円でしたが、一方で「スタンダード」というグレードは、なんと約161万円で購入できました。
また、トヨタ「カローラ」や日産「サニー」をはじめとした大衆車の廉価グレードでは、100万円を切るモデルもありました。
同じクラウンでありながら、その価格差は2倍以上。これほど安かった理由は、徹底的に装備を削ぎ落としていたからです。フェンダーミラーに手回し式の窓、バンパーは無塗装など、走る機能以外を極限までカットした、いわば「素うどん」のような仕様でした。
では、なぜ現代のクルマには、こうした激安グレードがないのでしょうか。「装備を外せば、その分安くなるはず」と考えるのが自然ですが、実は現代の工場では、そう簡単なハナシではありません。
昨今の自動車工場は、パワーウインドウや安全センサーなどの高度な装備が「付いていること」を前提に、ロボットによる自動化が進められています。
もしここで、あえて「手回し窓」や「キーレスなし」のクルマを作ろうとすると、標準化されたラインに乗せることができず、「特注品」のような扱いになってしまいます。その結果、別の手作業工程が必要になり、かえって手間とコストがかさんでしまうのです。
つまり、現代においては“安くするために装備を削る”ことが、逆にコストを増やしてしまうというパラドックスが起きています。結果として、最初から「全部入り」を標準にするのが、最も安く作る方法になったと言えるでしょう。





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