「ミサイルいきなり飛んできた」日本の自衛艦は撃ち落せる? 米駆逐艦は迎撃 ただ“直接狙われてない”けども

アメリカ軍の法的整理はいかに?

 そもそも、海外で活動中の軍艦が飛んでくるミサイルを撃ち落とすというのは、一般的には無制限に認められるものではありません。

 事件が発生した中東地域を担当するアメリカ中央軍の声明によると、ミサイルの撃墜は「乗員の安全を守るための措置」であったとされています。この文言からは、艦艇を守るための自衛行動、すなわち自衛権に基づいた行動であったというニュアンスがくみ取れます。

 ただ、アメリカ軍では自衛権について次の2つに分けています。1つめは、国家に対する攻撃に対して行使される「国家自衛(national self-defense)」、そして2つめが海外で活動するアメリカ軍や他国軍の部隊に対する攻撃に対して行使される「部隊自衛(unit self-defense)」です。

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紅海でイエメンから発射されたミサイルを迎撃したアメリカ海軍の駆逐艦「トーマス・ハドナー」(画像:アメリカ海軍)。

 このうち今回の事例では、後者の「部隊自衛」が関係してくると考えられます。部隊自衛は、部隊の任務遂行などを妨害するような武力行使を指す「敵対行動」や、そうした武力行使の差し迫った脅威を指す「敵対意図」が存在する場合に、部隊指揮官の命令に基づき行使されるものです。もし、今回の事例において部隊自衛が行使されたとすると、ミサイルの接近を敵対行動と捉えて、これを撃ち落とすという決断が下されたといえるでしょう。

 なお、アメリカ国防総省の報道官が明らかにしているように、ミサイルは「トーマス・ハドナー」に向かって飛行していたわけではないという点を踏まえると、ミサイルが針路を変更するおそれから、これを敵対意図だと判断した可能性も否定できません。

【見たことある?】これが日本の護衛艦による艦砲&ミサイルの「実射」です(写真)

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コメント

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1件のコメント

  1. 法の運用と解釈について重点を置いて述べた記事で、しかも「軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。」と自己アピールしている著者の表した記事にしては、ちょっと詰めが甘いというか。。。記事全体の主張や意味合いには特別に文句はありませんが、細かいところが。

    >護衛艦なる「武器」

    一般的な話し言葉とか一般人のメモ書きとかではなく、法令上の用語の話なんですから、護衛艦は「武器」ではありません。自衛隊法の中に書かれている語句の中で言えば「船舶」です。同様に、弾薬、火薬、航空機も法令では「武器」ではありません。
    もちろん、自衛隊法第95条に基づき武器を使用する際の防護対象に護衛艦すなわち「船舶」は含まれているので、護衛艦が攻撃を受けていたりそれが差し迫っているときに同条基づいて武器(護衛艦の砲など)を使用することは適法です。同条では「自衛隊の武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料(以下「武器等」という。)」と定められていて、「(以下「武器等」という。)を職務上警護するに当たり、人又は武器等を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には」となっているので。

    ただ、法令上、「武器」と「武器等」とは別の用語です。
    当然、「武器」には許されていて「船舶」には許されないことも、自衛隊法の中だけでもあります。(そもそも物理的に武器ができて船舶ができないこと等。)
    法の研究を行うとアピールしている研究者さんとしては、用語の使い方がちょっとお粗末ではありませんかね。