日本生まれなのに「世界最大級のコンテナ船」が日本に帰れないワケ 物流の世界サイズ“受入れムリ”な現状
日本でも入れる港はあるけれど…
ONEは2020年12月24日に船主である正栄汽船と超大型コンテナ船の長期用船契約を締結し、2万4000TEU型を計6隻、建造することが決めました。ヤードはJMU呉事業所が2隻、今治造船の丸亀事業本部が2隻、同西条工場が2隻。2021年1月にはJMUと今治造船による商船営業・設計の合弁会社「日本シップヤード(NSY)」が設立されており、両社の技術を結集して開発・建造が行われました。
また、6隻のうち2隻は政府系海外向けインフラファンドの海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が新造船の建造をファイナンス面で支援するため42億円を出資しています。
ONEの2万4000TEU型は、JMU呉事業所で2023年6月に竣工した「ONE INNOVATION」に始まり、今治造船の西条工場で建造中の6番船「ONE INTELLIGENCE」が12月中に引き渡されると、全てが揃います。
そんなONEの新造メガコンテナ船ですが、残念ながら日本には寄港しません。ここに、世界の物流における日本の立ち位置と港湾の現状が表れています。
まず2021年のコンテナ取扱個数は、東京港が486万TEU、横浜港が286万TEUなのに対して、世界トップの上海港は4703万TEU、2位のシンガポール港は3747万TEUと大きく差を付けられています。北米・欧州方面への基幹航路の寄港回数でもシンガポール、上海、釜山の各港に比べると京浜港、阪神港ともに見劣りします。
そもそも日本で2万4000TEU型の接岸が可能な水深18mの岸壁を持つコンテナターミナルは、横浜港南本牧ふ頭の2バースだけです。さらに言えば、メガコンテナ船に関しても日本はコスト競争力に優れている中国や韓国の造船所と競合しており、ONEを含む大手コンテナ船社が今後、2万TEUを超えるコンテナ船を日本の造船所で整備するかは不透明な状況です。
マゼンタカラーを海面に映して広島湾を進む「ONE INSPIRATION」。ONEが誇る2万4000TEU型シリーズの1隻として、効率的な国際物流の構築に向け活躍することが期待されています。
【了】
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。
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