「返して」に応えた? 自賠責“ネコババ”からの返済増額 「100年計画」を脱する がんばれ財務省
2024年度当初予算案が閣議決定。国土交通省が財務省に返すよう求めている “借金”、自賠責保険の運用益の返済は当初予算で過去最高に。加えて2023年度は補正予算でも返済が実施されるなど、財務省の姿勢が変化してきています。
繰戻し額が年々増えて、ひとまず“100年返済”を返上
2024年度当初予算案が閣議決定されました。国土交通省から財務省に繰り入れられた自賠責保険の保険料運用益の2024年度当初予算案における返済額(繰戻し額)は65億円。返済が再開された2018年度以降の当初額では最高となりました。
交通事故の被害者救済制度である自賠責保険は、かつて自動車ユーザーの支払った保険料をもとに国土交通省が再保険を引き受けていました。その運用益で作られた財源のうち1兆1200億円が約30年前に財務省へ貸し付けられ、いまも残債約5900億円が未返済となっています。
財務省の返済は2022年度の54億円を基本に、それを下回らない範囲で国土交通省と協議の上で決定するとされていて、今回は2023年度当初額の60億円を上回る65億円に決まりました。
国交省と財務省の貸借は、財政上は国土交通省の「自動車安全特別会計」から財務省の「一般会計」への貸出し(繰入れ)という形で行われ、1994年度と1995年度の2年間で1兆1200億円が実行されました。当初は数年間で返済される予定でしたが、2003年度から2018年度まで15年間は、返済が途絶えていました。
というのも、財務省は毎年12月末を目途に一般会計予算案を編成しますが、国交省の特別会計への返済額は要求額を具体的に示さず、一般会計予算として両省の合意で決めてきました。そのため返済額が一定せず、まったく返済されない年度もあったのです。
しかし、交通事故被害者らの粘り強い要望により、財務省は返済を再開。鈴木俊一財務相も会見でこう話していました。
「財政事情が厳しい中におきましても、減税の実施の如何にかかわらず、大臣間での合意に基づいて、一般会計からの繰戻しを着実に進めていきたい」(11月7日)
財務省の姿勢は変化しています。2019年度からは、当初予算に加えて補正予算でも返済を計上し、今年度(2023年度)は単年度で過去最高となる73億円が返済される予定です。
2024年度当初予算案への計上で、財務省への貸付金は5,802億円億円(2024年度末見込み)まで減りました。大臣間合意による返済の基本ベースは前出の通り54億円ですが、このペースが続けば100年を超えることなく完済が実現しそうです。
【了】
Writer: 中島みなみ(記者)
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。
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