「コルベット」ってどんな軍艦?…実は説明不可能!? かなりカオスな呼称の実態 自衛隊こそ案外正しい?
東側は種類が多すぎてややこしいことに!?
しかし、戦後しばらくすると、艦種の呼び名はかなりややこしくなります。
1970年代から2015年までポルトガル海軍が運用したバッティスタ・デ・アンドラーデ級コルベットは、かつて同国が有していた植民地の防衛に対応するために、全長89.6m、満載排水量1380トンを有し、対潜能力のほかに、大型フリゲートのように船体後部にヘリコプター甲板を備えました。そのため、沿岸だけではなく、外洋でフリゲートや駆逐艦などと共同で任務を行える能力を備えており、見た目だけなら「フリゲート」と変わりませんでした。
また、ソビエト連邦を中心とした東側陣営で、「コルベット」はさらに別の進化を遂げています。
東側陣営では、沿岸部に接近した揚陸艦や輸送艦を撃退するため大型の魚雷艇などに対艦ミサイルを取り付けた艦艇が開発されていました。しかし、その大きさでは不安があるということで、全長59.3m、基準排水量671トンの新造ミサイル艦が1967年に就役します。ソ連で「1234型小型ミサイル艦」と呼ばれた同艦は、北大西洋条約機構(NATO)などの西側陣営ではナヌチュカ型コルベットと呼称され、コルベット扱いされることとなります。
このミサイル艦(コルベット)はソ連崩壊後のロシアでも発展していきました。最新鋭の22800型小型ミサイル艦(NATOの呼称ではカラクルト型コルベット)は、2022年2月に始まったウクライナ侵攻で「カリブル」巡航ミサイルを発射し地上施設攻撃を行ったほか、将来的には極超音速ミサイル「ツィルコン」の運用も考えられており、西側陣営の駆逐艦やフリゲートのように運用されています。
そんなカラクルト型コルベットは全長77m、満載排水量は870トンと、どちらかといえば小型です。その一方、インド海軍で配備されているカモルタ級コルベットは全長109mで満載排水量3150トンもあり、排水量ではフランス海軍が運用しているフロレアル級フリゲートの満載排水量2900トンを上回る数字となっています。
戦後直後こそ「コルベット」の大きさはなんとなく決まっていましたが、現在はその国の運用方法によって、大型でも「コルベット」と呼ぶケースが増えています。また「フリゲート」に関しても大型化しており、「駆逐艦」の大きさの境界もなくなっています。
「コルベット」「フリゲート」「駆逐艦」--その違いは今や、運用している国の海軍がなんと呼ぶか程度の差しかなくなっており、艦種だけで大きさを想像することは困難になっています。
なお日本では、1945年の敗戦で旧海軍が解体されたことで、「海軍軍艦及水雷艇類別標準」のような分類法は消滅します。その後に創設された海上自衛隊では、「DD」「FF」など厳密には用途を分ける艦種記号を用いていますが、基本的に水上艦艇は全て「護衛艦」と呼んでいます。大雑把な分類法ですが、海外の艦艇の境界がごちゃごちゃになっている21世紀の今に意外とあっているのかもしれません。
【了】
※一部修正しました(3月7日10時00分)。
Writer: 斎藤雅道(ライター/編集者)
ミリタリー、芸能、グルメ、自動車、歴史、映画、テレビ、健康ネタなどなど、女性向けコスメ以外は基本やるなんでも屋ライター。一応、得意分野はホビー、アニメ、ゲームなどのサブカルネタ。
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