世界唯一の救難飛行艇「US-2」パイロットの職人芸&“オンリーワンの仕組み”を見た! 問われるお値段「F-35の2倍」

中国も開発中 ただ救難特化というよりも…

 US-2は、1970年代から2017(平成29)年まで使われたUS-1Aの改良型ということになっており、機体の外見はプロペラの枚数以外あまり変わらないように見えますが、中身は大きく変わって運用の柔軟性は高くなっています。

 操縦席にはフルカラー液晶画面のグラスコックピットを採用するなど、電子機器まわりは一新されました。またキャビンが与圧できるため高高度で巡航でき、荒天空域にも影響されず最短距離を飛べるようになりました。脚部も大幅に強化され、燃料満載状態でも着陸が可能になっています。

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フルカラー液晶画面のグラスコックピットの操縦席(月刊PANZER編集部撮影)。

 US-2は世界でも珍しい救助に特化した飛行艇ということで、民間転用や輸出も話題に上がりましたが、いずれも実現していません。2023年11月6日付のロイターが、US-2生産終了の可能性を報じました。要因のひとつがコストの高騰です。2024年度分のUS-2の取得価格は300億円、2025年度には700億円と見積もられたと報じられています。ちなみに航空自衛隊のF-35A戦闘機の取得価格は約134億円です。

 2024年現在、救難飛行艇を運用しているのは日本だけですが、US-2よりやや大きく、最高速度以外の性能が同等のAG-600多用途飛行艇を中国が開発中で、2024年に認証取得、2025年に運用開始が予定されています。

 これはUS-2の競合相手という以上に、中国が進出を強める南シナ海の人工島へのアクセス手段になることに注目しておく必要があります。太平洋は波高しです。

【了】

【辛坊氏も助けられた】世界唯一「US-2」の機内(写真)

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