旧日本海軍“最後の大仕事”=人類史上稀な民族大移動だった「復員事業」 かき集めた日本の艦艇227隻の“使い分け”とは

太平洋戦争の終結後、遠く太平洋島嶼部、中国大陸などに取り残された日本軍将兵の復員と民間人の帰国事業が始まりました。その対象者の数はおよそ660万人。史上稀に見る民族大移動のために、戦争で疲弊していた日本はともかく使えそうな船を集めます。

最優先だった復員輸送 船が全然ない!

 1945(昭和20)年8月の終戦後、日本政府が最優先で取り組まなければならなかったのは軍隊の武装解除と復員でした。これは、日本の無条件降伏に際して戦勝国が発したポツダム宣言にあった「日本の武装解除」と「兵員を家庭に帰す」という条文によって日本に課にされたものでした。

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1946年1月、5000人の復員兵を乗せてラバウルで給油中の「葛城」(画像:オーストラリア戦争記念館)。

 このうちの後者、つまり太平洋の広範囲にわたる島嶼部とアジア大陸の各地に取り残されたおよそ660万人もの軍人と軍属、民間人を日本に帰還させるというのは、並大抵のことではない、人類史上稀に見るほどの大事業でした。本稿では、この大規模な「民族大移動」ともいえる復員事業について、その実態をひもといてみます。

 まず、戦争によって国外に散らばった邦人を速やかに帰国させるため、日本は自前で船を用意しなければなりませんでした。ところが、戦争で軍艦や徴用された商船は大半が沈没し、生き残ったわずかな艦艇も空襲で損傷していたのです。

 できるだけ多くの帰国者を乗せられる大型艦が必要でしたが、唯一生き残った戦艦「長門」はすでに米軍に接収されていました。空母は航空機の格納庫に大勢を収容できますが、戦争後期に建造が進んでいた雲龍型の多くが未完成か空襲で損傷していました。改造空母の「隼鷹」は1944(昭和19)年12月にフィリピンから兵員輸送中に米潜水艦の魚雷が命中し、なんとか佐世保までたどり着くも、損傷した機関部を修理する余裕がないまま放置されていました。

 結局、使用可能な空母は日本海軍最初の空母だった「鳳翔」と、雲龍型の「葛城」の2隻だけです。「葛城」は空襲で飛行甲板が大破していましたが、航行に支障はなく修理が可能でした。

 他に、5000t以上の船では巡洋艦の「八雲」「鹿島」「北上」「酒匂」、潜水母艦「長鯨」と徴用船の「氷川丸」「高砂丸」があり、10隻以上残っていた松型を含む駆逐艦、海防艦、輸送艦などを含めた227隻が復員輸送船に投入されることとなりました。

 これらの船は損傷個所を修理し、武装解除と人員の収容スペースを確保するため備砲を撤去し、空母は格納庫に畳が敷かれ、識別のため舷側に国籍マーク(日の丸)とローマ字の艦名が描かれました。

【ここに乗って日本へ帰ってきた】改造された“復員輸送艦”の艦内(写真)

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