バレーボールかよ!? 航空戦術「トス爆撃」とは 起源は古いがデメリット改善で再び脚光 メリットは?

泥沼化しつつあるウクライナとロシアの戦闘。両者が対地攻撃で採っている戦術のひとつに「トス爆撃」なるものがあるそうです。構想自体は昔からあった模様ですが、どういう経緯で生まれ、どんなメリットがあるのでしょうか。

通常行わない対地攻撃方法をなぜ採用?

 ロシアとウクライナによる戦争が始まって以降、両国とも軍用機やヘリコプターで「トス爆撃」と呼ばれる戦術を頻繁に行っている模様です。

 トス爆撃とは、戦闘機やヘリコプターが超低空飛行から機首を上げて上昇し、20~30度ないし場合によっては垂直方向に爆弾やロケット弾を投下することで、「トスを上げる」ような弾道を描いて長時間飛翔させ、目標地点を攻撃するという対地攻撃の戦術です。

 ただ、トス爆撃そのものは決して新しい戦術ではありません。古くから行われており、かつては「ロフト爆撃」とも呼ばれていました。そのため、既存の戦闘機の火器管制システムにはトス爆撃のための専用モードを備えていることも少なくないのです。

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ロシア空軍のSu-34戦闘爆撃機(画像:ロシア国防省)。

 とはいえ、通常はトス爆撃を行うことはありません。なぜなら、水平爆撃や降下爆撃に比べて照準誤差が非常に大きくなるからです。

 トス爆撃と相性が良い兵装は、多少の誤差を考慮しなくてよい戦術核爆弾です。また、投下から着弾までの時間を稼げるため、投下母機が核爆弾の危害範囲の外側に離脱するのに適しています。

 ウクライナでは幸いにも核爆弾は使用されていませんが、現代の航空戦においてトス爆撃が再び注目されている大きな理由は、ウクライナの戦場環境が大きく影響しているようです。ロシア空軍、ウクライナ空軍ともに相手の防空網が強力すぎて自由に航空作戦を行えない、いわゆる「航空優勢(制空権)の喪失」状態にあるためです。

 ウクライナ空軍、ロシア空軍ともに、戦闘機やヘリコプターは相手の長射程地対空ミサイルを恐れ、レーダーやミサイル射程の覆域外である超低空飛行での作戦を余儀なくされています。

 しかし、低空飛行では爆弾の射程距離が短くなり、敵地へより深く侵入せざるを得ないという欠点があります。これでは、短射程地対空ミサイルや携行地対空ミサイルの射程圏内に入ってしまうでしょう。

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