バレーボールかよ!? 航空戦術「トス爆撃」とは 起源は古いがデメリット改善で再び脚光 メリットは?
戦術の欠点は兵器の高性能化でカバー
このジレンマを解決するための手段として多用されているのがトス爆撃になります。長射程地対空ミサイルがカバーする高度での飛行を最小時間に短縮でき、かつ短射程地対空ミサイルの射程外から爆弾を投下できるのです。
トス爆撃はロシア・ウクライナ戦争の初期から行われており、特に戦争初期は無誘導爆弾やロケット弾が使用される映像が多く見られました。こうした航空攻撃は、精度の問題から都市や集落全体を標的とした無差別爆撃以外、特に地上部隊に対する作戦においては戦術的に意味のある攻撃はできなかったと考えられます。
しかし、トス爆撃の精度が低いという問題は、両空軍ともに誘導爆弾を多用することで、ほぼ解決に向かっていると推測されます。特に有効とされる兵装が滑空爆弾です。
滑空爆弾は主翼を持ち、グライダーのように上空を滑空することで飛距離を大幅に延伸でき、さらにGPS誘導などによって精度が低下するという欠点を完全に克服することが可能です。そのため、トス爆撃と相性が非常に良いことが知られています。
ロシア空軍のスホーイSu-34戦闘爆撃機は、500kg、1500kg、3000kgといった大型爆弾に滑空誘導ユニットを取り付けて使用することで、ウクライナ地上部隊にとって大きな脅威となっているとか。実際、現地の報道を見てみると、滑空爆弾の威力について時間を割いて詳しく解説されている模様です。
ただ、トス爆撃と滑空誘導爆弾の組み合わせはウクライナ側も行っています。しかも、今後F-16戦闘機の運用が本格的に始まると、むしろ一層激しくなるのではないでしょうか。そうなると、ロシア地上軍もウクライナと同じように今まで以上に滑空爆弾の脅威に苦しむことになるかもしれません。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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