自衛隊初の女性イージス艦長 いまは神奈川地本の「心強いボス」パイオニアならではの悩みを聞いた

パイオニアならではの苦労がたくさん

 講演会などでは、やはり「かしま」艦長時代のお話をされることが多いそう。とはいえ、まだまだ自衛隊に関する一般の認知度は低く、陸自の訓練は常に匍匐(ほふく)前進、航空自衛官=パイロット、海上自衛隊は艦艇オンリーなど、偏った認識を持っている人も多いのだとか。そこで、興味を持ってくれた学生に対し、自衛隊にはさまざまな職種があるのだと話すと、興味深く聞いてくれると語っていました。

 一方で、自衛隊の活動には地域をはじめとした民間の理解と協力が大切なので、こうした日頃の広報活動には力を入れている模様です。

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江田島の海上自衛隊幹部候補生学校に在籍時の大谷さん。当時は3等海尉(画像:本人提供)。

 ところで、大谷1佐は女性自衛官のキャリアの幅を広げた方としても有名です。そこにはやはり困難も多かったと伺いました。

 まず、護衛艦の副長になってから最初の壁が「護衛艦で使う用語がわからない」ことだったそう。大谷1佐が幹部候補生学校に入校した当時は、護衛艦で勤務することができなかったため、おのずと護衛艦で使われる独自用語に馴染みがなかったのだとか。

 さらに「中級船務」という専門分野を学ぶ教育課程では、教育中に研修として護衛艦に乗るのですが、当時の護衛艦は女性の乗務に対応していなかったので、1人だけ米軍艦船に回され、アメリカ海軍の女性士官が対応するなか研修したのだそう。男性と同じ土俵に立つところから難しすぎる……、あまりにもハードな経験です。

 しかし、その甲斐あってか練習艦「かしま」の艦長時代には、航海中に初任幹部の要員の発表で男女関係なくさまざまな配置に決まっていくのを感慨深く見守ったとか。女性への門戸が開かれた自衛隊こそ目指すべき姿なのだと語る様子は、同性としてとても頼もしく、これからも続く自衛隊の活動における「大きな架け橋」になる人だなと感じました。

 そんなわけで今回は、地本のお仕事と女性自衛官としての誇りについて教えていただきました。次回は護衛艦「かしま」の艦長経験を通して感じたことをお送りします。

【了】

【女性ならではの悩みも】大谷1佐、艦長時代を振り返る(マンガを読む)

Writer: たいらさおり(漫画家/デザイナー)

漫画家・デザイナー。夫のやこさん、娘のみーちゃんと暮らすのんきなオタク。海自にはまってからあれよあれよと人生が変わってしまった。著書「海自オタがうっかり『中の人』と結婚した件。(秀和システム)」「北海道民のオキテ(KADOKAWA中経出版)」各シリーズ発売中。

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