ロシアが“味方の”最新ステルス機を撃墜!? 残骸はウクライナ領内へ 破壊せざるを得なかったワケは
ロシアの最新技術が丸裸になる?
現時点では、S-70「オホートニク」は自律交戦するような能力は間違いなく有しておらず、地上のコントロールによる限定的な攻撃能力に留まっていると推測されますが、回収された残骸からはUMPB D-30SN小型滑空爆弾の部品が発見されていることから、こうした能力を部分的ながら実証しようと試みていたことが裏付けられています。
墜落したS-70「オホートニク」は今後、アメリカなど西側の調査陣が加わり徹底的に解析されることになるでしょう。その結果次第では、ロシアの最新技術が明らかになる可能性があります。
これは1999年、ユーゴスラビアに撃墜されたアメリカ空軍のF-117「ナイトホーク」ステルス攻撃機の残骸が回収された事件を思い起こさせます。なおF-117の残骸は現在ベオグラードの航空博物館において一般公開展示されているため、将来「オホートニク」も同じようになるかもしれません。
当時、F-117の撃墜は航空技術の解析と情報戦に大きな影響を与えました。今回の「オホートニク」の墜落も同様に、インパクトをもたらす可能性がありますが、逆にかつて日本で起きた函館空港へのMiG-25亡命事件のように過大評価が明らかとなり、ロシアの技術的な限界が露呈する可能性もあります。
いずれにせよS-70「オホートニク」の墜落は、ロシアにとって新鋭機が敵側に渡るという痛恨の喪失であり、ウクライナにとっては技術情報を得る貴重な機会となることは間違いないでしょう。今後の解析結果に要注目です。
【了】
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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