これが「空港シャトルバス」なの!? 本州最西端の地を走る “かなり変わった路線”に乗ってみた 車両はマイクロバス
下関市内から山口宇部空港へのアクセスを担う「空港シャトルバス」は、一般的な空港連絡バスとはかなり異なっています。実際に乗車して確かめてみました。
乗客がいないと運休!?
山口県の空の玄関口が山口宇部空港です。空港の公式サイトには、交通アクセス手段となるバス路線として、山陽新幹線の駅がある新山口駅と、空港がある宇部市の中心駅・宇部新川駅を結ぶ路線が案内されていますが、このほかに「空港シャトルバスで行く」という項目があり、下関駅方面を結ぶバスも案内されています。
この下関発着の山口宇部空港シャトルバスは、都市と空港を結ぶ一般的な空港連絡バスとは、かなり異なる特徴をもっています。
じつはこの空港シャトルバス、下関山電タクシーが運行する「区域乗合」というタイプで、運行ダイヤが設定されているものの、乗車には事前予約が必須です。予約がなければ運行されません。つまり利用者の予約を受けて運行される「デマンドバス」のようなスタイルを採用しています。
もともと、下関と山口宇部空港を結ぶ空港連絡バスは、サンデン交通が運行していましたが、2021年9月に廃止。10月から下関山電タクシーが乗合タクシーとして運行を引き継ぎ、2022年4月から乗車定員27名のマイクロバスが使用されるようになりました。上述したように路線バスとは異なるので「空港シャトルバス」という案内がされているようです。
ダイヤは航空機に接続するよう組まれており、空港発の便では、空路の2便から接続を受けるものも。その場合、両方の飛行機が到着してから発車する形になります。
今回は、空港シャトルバスに下関駅から乗車しました。この日の筆者は予定がたびたび変わるスケジュールで、そのつど下関山電タクシーに予約を入れたり取り消したりする電話をかけていたのですが「ほかの予約が入っているので大丈夫です」と伝えられました。
乗車した下関駅16時30分発の便も当日予約が入っていたといい、時刻表通りにマイクロバスが到着しましたが、その予約していたという乗客が姿を現しませんでした。運行会社に迷惑をかけてしまうので、予約キャンセルの連絡は欠かさないようにしたいものです。
唐戸地区、関門橋、壇ノ浦……車窓に関門エリアの名所が
下関駅を出発したバスは国道9号に入り、片道3車線の大きな道路を東へと走行。やがて市立しものせき水族館「海響館」や「唐戸市場」を擁する唐戸地区に差し掛かります。観光地や市民が集う場であるため空港シャトルバスにも停留所が設けられており、大きな荷物を抱えた1人が乗車。地元の若者たちが誤乗しそうになり、運転手が声をかけて止める一幕もありました。
唐戸地区を過ぎて車窓を見上げれば関門橋がそびえ立ち、右手には関門海峡を挟んで対岸の「門司港レトロ」地区も見え、空港シャトルバスという名前からは想像がつかない絶景の車窓が気持ちを高ぶらせてくれます。さらに平家滅亡の地である壇ノ浦付近では、源平合戦の模様を描いた石像や、幕末期に来寇した外国艦隊に対処するため設置された長州砲のレプリカなどが展示された「みもすそ川公園」も見られて、思いがけず観光が楽しめました。
やがて長門国の国府が置かれた街である長府に入ると、国道9号は国道2号と名前を変え、ロードサイド店などが姿を見せるようになりました。対向車線にはたくさんの乗客とともに下関駅へ向かうサンデン交通のバスも頻繁に現れ、旺盛なバス需要が感じられます。
マイクロバスは城下町長府、長府駅前、小月局前と設けられた停留所へ律儀に停車したものの、利用者はおらず、結局車内の乗客は2人だけのまま、山口宇部空港を目指しました。国道2号を離れた後は、埴生ICから山陽自動車道宇部下関線に入りました。このあたりから案内標識には「空港」の文字も見えはじめました。
宇部東ICを下りると県道6号「山口宇部道路」で宇部市内を南下。JR宇部線をオーバークロスすると、間もなくして空港ターミナルに到着しました。30分ほど早着しましたが、鉄道利用であれば乗り換えが生じるところを直接移動でき、快適に過ごすことができました。
【了】
Writer: 水野二千翔(高円寺工房/モビリティライター)
レイルウェイライター種村直樹氏に憧れ鉄道・バスライターを志す。これまで「バスマガジン」や「Rail Magazine」で執筆。現在はモビリティ全般に興味を広げ、ドローンや空飛ぶクルマの記事も。国家資格「一等無人航空機操縦士」所持。近著に「ドローン3.0時代のビジネスハック」ほか。
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