名古屋駅と「かつての空の玄関」を結ぶ高速バス、実は大盛況!? 補助席まで埋まって発車 空港もバスも何が便利なの?

「セントレア」に空の玄関口の座を譲った県営名古屋空港への足として活躍する高速バス路線が、あおい交通の「名古屋駅前―空港線」です。実際に乗車してチェックしてみました。

「県営名古屋空港への足」となる高速バス路線とは

名古屋市の北に位置する県営名古屋空港は、中部国際空港「セントレア」に“空の玄関口”の座を譲った現在でも、FDA(フジドリームエアラインズ)の新潟線や札幌(丘珠)線などが就航し、1日48便(2024年7月~10月ダイヤ)が離着陸します。そんな県営名古屋空港への足として活躍するのが、あおい交通の「名古屋駅前―空港線」です。実際に乗車してチェックしてみました。

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あおい交通の「名古屋駅前―空港線」(水野二千翔撮影

 この路線は2024年7月8日の運行ダイヤ改定以降、名古屋駅発は朝6時台~夜9時台まで31本、県営名古屋空港発が朝7時台~夜10時台まで32本運行されています。FDAの運航ダイヤに合わせていますが、なかなかの高頻度といえるでしょう。

 今回は、9月の3連休初日の土曜日、名古屋駅前(ミッドランドスクエア前)停留所を朝9時30分に発車する便に乗車してみました。この日はあいち航空ミュージアムでイベント「暮らしを守る航空機たち 2024」が開催され、参加者と思しき乗客が見られました。それに加え、大きなスーツケースを持った旅行者の姿も。

 9時ごろからバスを待っていると、6人も座ればいっぱいになるベンチと屋根があるだけの停留所には、あっという間に長蛇の列ができあがりました。こんな様子は日常茶飯事のようで、停留所には、列が伸びたら折り返すように案内する掲示がありました。

補助椅子まで埋まった状態で発車!

 この路線は、空港だけでなく、豊山町や三菱重工の工場へのアクセスも担います。ただ今回乗車したのは土曜日ということもあり、航空機の利用者やイベント参加者が大部分のようでした。

 筆者の後ろに並んでいたご婦人は、「名古屋駅と県営名古屋空港を直接結んでくれるので便利」といい、2週間に1度程度、所用で本路線を使用しているそう。バスを待つ間、混雑してきたところで列の整理役を買って出て、慣れた様子で次々とやってくる乗客に声をかけ、整列乗車を促していました。

 ちなみにご婦人は、本路線の運賃が現金またはPayPay払いに対応しており、ICカードが使用できない旨も乗客に説明し、さながら「車掌さん」のような活躍ぶりでした。

 9時30分発の便には正座席49人乗りの車両が使用されていましたが、補助席も埋まり50人以上が乗車して出発。錦通を通り、名駅入口から名古屋高速都心環状線に上がります。やがて左手に名古屋城、右手に中部電力 MIRAI TOWER(旧・名古屋テレビ塔)が見え、車窓観光が楽しめるのはうれしいポイント。

 東片端JCTで高速1号楠線に入り北上し、河川敷の広い矢田川、庄内川を立て続けに渡河。名古屋第二環状自動車道が交差する楠JCTからは高速11号小牧線と名前が変わり、ほどなくして豊山南出口で名古屋高速を下りました。名古屋駅を出発してここまで15分。高速バスでは高速道路に入ったらひと眠りという人も多いでしょうが、これでは一睡する間もありません。

 豊山町内の豊山幸田、三菱重工南ではともに降車がなく、バスは定刻(9時50分)よりやや遅れて9時55分に県営名古屋空港へ到着。これは出発時の遅れを回復できなかっただけで、ほとんど定時運行といえるでしょう。乗車した感覚としてはあっという間です。ここで半分以上の乗客が降りていきました。

 ちなみに名鉄名古屋駅から中部国際空港までは特急「ミュースカイ」で28分、バスなら1時間25分以上(ただし全便運休中)もかかります。県営名古屋空港と名古屋市内の近さも実感できました。

 その後、あいち航空ミュージアムへは4分で着きます。左手の車窓には県営名古屋空港の滑走路が見え隠れし、名古屋市消防航空隊や各航空事業者のハンガーが次々と現れ「空港に来た!」とワクワクします。

 一方、右手の車窓には2023年に開発計画が中止になった「三菱スペースジェット」の最終組立工場が現れます。門は固く閉ざされており、クルマは1台も止まっておらず「国産ジェットが夢の跡」という寂しさが漂っていました。

【了】

【画像】そこ通るのか!これが高速バス「名古屋駅前―空港線」の運行ルートです

Writer: 水野二千翔(高円寺工房/モビリティライター)

レイルウェイライター種村直樹氏に憧れ鉄道・バスライターを志す。これまで「バスマガジン」や「Rail Magazine」で執筆。現在はモビリティ全般に興味を広げ、ドローンや空飛ぶクルマの記事も。国家資格「一等無人航空機操縦士」所持。近著に「ドローン3.0時代のビジネスハック」ほか。

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