「自衛隊コレ買わないか」イギリスから売り込まれた「謎の新型ミサイル」の正体 F-35を想定 空自の将来に“欠けた視点”を埋めるか

北朝鮮対策の切り札に?

 弾道ミサイルなどによる攻撃を受ける前や受けた後に、策源地を日本側から攻撃して被害を最小限にするという発想は合理的なのですが、策源地攻撃の主力となるのは戦闘機です。その戦闘機を、策源地の周辺に置かれた敵の防空レーダーや、防空レーダーによって収集された情報を使用する地対空ミサイルによる攻撃から、どのようにして護るかという問題が付きまとっています。

 そこで誕生したのが防空レーダーと地対空ミサイルを無力化するSEAD(敵防空網制圧)という戦術で、策源地攻撃を行うのであれば、必ずといって良いほどSEAD能力も必要となります。

 日本でも策源地攻撃能力を持つのであれば、SEAD能力も持つ必要があるとの議論がなされており、一時期はアメリカ海軍とオーストラリア空軍が運用しているSEAD専用機EA-18G「グラウラー」や、アメリカ空軍などが運用している空中発射型電子妨害装置「MALD」の導入などが取りざたされていました。

 しかしEA-18Gの導入は、航空自衛隊の運用機の種類を増やすことは合理的ではないことなどから沙汰やみとなります。MALDは航空自衛隊のすべての戦闘機に搭載できるものの、策源地攻撃の主力となることが見込まれるF-35戦闘機のウェポンベイ(胴体内兵器倉)には収容できず、主翼下に搭載した場合、F-35の特長の一つである、敵のレーダーに探知されにくいステルス性能を損ねてしまうという問題を抱えていました。

 スピアEWはF-35への搭載を想定して開発されたスピアをベースとするため、F-35のウェポンベイに最大4発まで搭載できます。このため航空自衛隊の運用機の種類の増加や、F-35のステルス性能を損なう心配がありません。

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スピアEWの原型となる巡航ミサイルのスピアを搭載したユーロファイター・タイフーン。スピアもF-35への搭載が想定されている(画像:イギリス空軍)。

 日本政府は2022年に策定した国家安全保障戦略に、自衛目的で他国領域のミサイル基地などを破壊する「反撃能力」の保有を明記しています。これは策源地攻撃を言い換えたものと見て良いでしょう。

 また防衛省は、C-2輸送機に電子戦装置を搭載して、遠方から敵のレーダーを妨害する「スタンド・オフ電子戦機」の開発を進めていますが、実際に策源地攻撃を行うのであれば、攻撃の主力となる戦闘機に随伴するSEAD機の導入か、戦闘機にSEAD能力を与えるための戦力整備も並行して進める必要があると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 防衛省がスピアEWの購入に踏み切るのかを予想するのは困難ですが、前に述べた理由でSEAD機の導入や戦闘機へのSEAD能力の付与を断念してきた防衛省・航空自衛隊にとって、スピアEWは一つの福音となるのかもしれません。

【了】

【案外小さい…?】これが実物大「ナゾの新型ミサイル」です(写真)

Writer: 竹内 修(軍事ジャーナリスト)

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書は「最先端未来兵器完全ファイル」、「軍用ドローン年鑑」、「全161か国 これが世界の陸軍力だ!」など。

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