「真っ黒タイヤ売れません!」白ライン入りは苦渋の選択!? メーカーの知られざる葛藤とは
現在では「タイヤ=黒」というのが常識ですが、20世紀初頭の頃は「タイヤ=白」が当たり前でした。なぜ白いタイヤは見かけなくなったのでしょうか。実は今でも面影を残すタイヤもあります。
「タイヤ=黒」という常識はいつから?
ブリヂストンと出光興産は、2026年の実用化を目指して空気の充填がいらない「エアフリーコンセプト」に基づく「パンクしないタイヤ」の開発を現在進めています。
このタイヤはゴム製の接地面とホイールの間に特殊な樹脂スポークを備えており、ここでタイヤ形状を維持する仕組みです。だからこそ空気を入れる必要がなく、穴が開いてもつぶれることがないため走り続けられるのですが、このスポーク部分を青や赤に着色することもできます。そのため、既存の黒一色のタイヤを見慣れた人には少々奇異に感じるかもしれません。
タイヤが黒く見えるのは、耐摩耗性や耐久性を向上させるために、加工時に原料のゴムに「カーボンブラック」と呼ばれる炭素の黒い粉末を混ぜているからです。この技術は1912年にアメリカのBFグッドリッチ社が開発したものですが、自動車用の空気入りタイヤが発明されたのは、それから遡ること17年前の1895年のこと。ゆえに、実は黎明期のタイヤは黒くなかったのです。
では、当初の自動車用タイヤは何色だったのでしょうか。それはちょうど消しゴムが白いのと同じで、素材となる天然ゴムの色、すなわち白だったのです。もう少し正確に記すと、補強剤や増量剤として塩基性炭酸マグネシウムや炭酸カルシウムを加えていたため、アイボリーに近い、乳白色でした。
しかし、性能的にはカーボンブラックを配合した黒いタイヤの方が上です。そのため前述したように、1912年にBFグッドリッチ社が黒いタイヤを発明したことで、それまでの白いタイヤは徐々に市場から姿を消すはずでした。
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