軽トラ輸入に「待った」! 日米で自動車「プチ貿易摩擦」が勃発? 人気急上昇の「Kei」を締め出したい米国州政府の思惑

日本の軽トラックが、使い勝手の良さや燃費などから米国で人気を集めています。しかし、その輸入に「待った」をかける州も出現。なぜ日本の「Kei」を目の敵にするのでしょうか。

軽の輸入に「待った」 裏に潜む日米自動車貿易摩擦

 Sushi(寿司)、Kawaii(かわいい)、Manga(漫画)など海外で通じる日本語はたくさんありますが、Kei(軽)も世界共通語に仲間入りしつつあります。Kei-car(軽自動車)、Kei-truck(軽トラック)、Kei-vehicle(軽車両)など、日本の軽乗用車・軽トラックが海外で人気が出てきていることを反映して、英語、ドイツ語、フランス語などで広く普及しているのです。

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60年以上の歴史を持つスズキの軽トラック「キャリイ」(画像:PIXTA)。

 特に、米国で軽トラックの人気が高まってきています。2023年に日本から輸入された軽トラックの数は7500台を超え、2018年の1800台から約4倍に増えています(NBCニュースによる)。

 軽トラックと用途が似ているピックアップトラックの大型化が関係しているようです。フォード、トヨタ、日産など5大メーカーが2023年に米国で販売したピックアップトラックの平均重量は、いずれも5000ポンド(約2270kg)を超えています(NBCニュースによる)。

 一方、米国で出回っている軽トラックの中古車は、軽いものだと600kg台からあります。日本の軽トラックは小回りが利き、コンパクトな車体にもかかわらず荷物がたくさん積め、燃費も良いと、驚きを持って受け止められるのは納得です。

 加えて、米国では右ハンドルの自動車の輸入は原則的に認められていませんが、製造から25年以上たっている車両はクラシックカーとして、右ハンドルのまま輸入して公道を走れるという“抜け穴”があるのです。25年落ちの日本の軽トラックの価格が元々安いことに加えて、38年ぶりの水準となっている円安も追い風となっています。関税などを払っても日本から中古の軽トラックを輸入した方が、米国でピックアップトラックを購入するよりも安いのです。

 しかし、こうした軽トラック人気に米国のいくつかの州政府が待ったをかけました。軽トラックを含む軽自動車は簡易な構造から衝突時に生存率が低く、連邦自動車安全基準を満たしていないというのです。軽自動車が公道を走れる州は2024年6月時点で19しかありません(NBCニュースによる)。

 例えばジョージア州などでは、軽自動車の新規登録は認められていないどころか、登録済みの車両も更新できないという厳しい措置が取られています。軽自動車の所有者は、車両の転売もできず、泣き寝入りを強いられているそうです。マサチューセッツ州も軽自動車の登録禁止を検討し、軽自動車愛好家の反対運動を招いています。

 日本の軽自動車を目の敵にする米国州政府の思惑に疑問を呈する米国メディアもあります。いくつかの自動車専門オンライン誌が、軽自動車に分類されない日産「スカイライン」R34系が日本車だという理由だけでマサチューセッツ州で登録が却下された例を挙げ、ただ単に米国メーカーを守るためだけの締め出しではないかと分析しています。1970年代から形を変えて繰り返し問題になってきた日米自動車貿易摩擦の新しい形なのかもしれません。

【日本のザ・軽トラ】歴代「キャリイ」の変遷を写真で見る

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