世界のリニア市場で日中開戦か
中国でリニアモーターカーの建設が進んでおり、日本と世界のリニア市場をめぐる争いが始まっていると同国のメディアが伝えました。本当にそうなのでしょうか。
ライバル視される日本
中国の東方早報は2014年7月、日本のリニアモーターカーを引き合いに出しながら、同国のリニアについて伝えました。
その報道によると中国ではリニアの建設が進んでおり、2014年5月には湖南省長沙市で新たに工事がスタート。北京市でも、2011年2月からリニアの建設が進展中だと伝えられています。
またその報道では、リニア建設の動きは中国だけでなく日本でも東京と大阪を結ぶ計画が進められており、日本はアメリカへのリニア技術無償提供を考えている、日本はリニアの世界輸出をもくろんでいる、(中国と日本で)リニア世界市場を巡った争いがすでに始まっている、とも合わせて伝えられました。
世界のリニア市場を巡る日本と中国の争い、本当に始まっているのでしょうか。この中国メディアの記事には大きな問題点があります。
ネコとトラを比較?
この中国メディアの記事において、同国で建設が進められているという「リニア」は最高速度100km/h程度です。対し、世界市場を巡る争いの対象として引き合いに出されている日本の「超電導リニア」は最高速度500km/h以上。「リニア」という部分は同じでも、まったくの別物なのです。
中国メディアの言う最高速度100km/h程度の「リニア」は「鉄輪式リニアモーターカー」と呼ばれるもので、浮上せず、レールと車輪を使って走ります。日本では都営大江戸線や大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線、福岡市地下鉄七隈線などがこの方式です。
そのため中国がリニアで日本と比較したいならば、リニア中央新幹線に採用され、日本だけが技術を事実上実用化している「超電導リニア」ではなく、「鉄輪式リニア」の大江戸線や長堀鶴見緑地線と比較すべきなのです。この中国メディアの記事は同じネコ科だからと、ネコとトラを比較しているようなものでしょう。
日本の「超電導リニア」と中国の「鉄輪式リニア」は性質が大きく異なるため、リニア世界市場を巡った両国の争いは始まってもいませんし、そもそも始まりようがない、というのが正しい認識だと思われます。「鉄輪式リニア」の市場で争うことはありえますけれども。ひとくちに「リニア」といっても、様々な方式があることに注意が必要です。
ちなみにその中国メディアの記事には、2002年に「上海トランスラピッド」が「世界初の商用リニアモーターカー」として開業した、とも記されています。このリニアは最高速度430km/hの高速型で、日本の「超電導リニア」にとってライバルになりえるかもしれません。
しかし上海のリニアはドイツの「トランスラピッド」技術を導入したもので、中国の技術ではありません。またその開発元であるドイツでは、「トランスラピッド」の将来性を疑問視し、開発を中止してしまいました。
【了】
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