「ななつ星」活用 JR九州が「鉄道力」で都心に卵屋出店

JR九州のグループ会社が都心の一等地に卵屋を出店しました。なぜそこでJRが卵を売るのでしょうか。これには豪華クルーズトレイン「ななつ星」も関係していそうです。

赤字の「ななつ星」を走らせる意味

 事業多角化にあたってJR九州は、「鉄道業」という特性を上手く活用しているように見えます。

 1972(昭和47)年、ある不動産会社が鉄道会社を買収しました。現在の紀州鉄道です。この買収は、不動産会社が「鉄道会社」という信用を得るため行われたといわれています。確かに「鉄道会社」をアピールすることは、信頼性などの意味で有利でしょう。特にJR会社は、社会的な信用が非常に高いと思われます。

 「鉄道会社であること」が有利ならば、その鉄道事業を優れたものとしてアピールできればさらに有利にでしょう。

 「ななつ星in九州」を赤字でも走らせる理由は、このあたりに存在するのかもしれません。日本初の「豪華クルーズトレイン」を走らせたことで全国的に注目を浴びましたし、それによりJR九州の鉄道事業に対して魅力的に感じた――信用が上がった人がほとんどではないでしょうか。また豪華列車を制作したことで、「JR九州というブランド」=高級、高品質という印象も与えることができたのではないでしょうか。

 「ななつ星」の赤字は、特に同社へなじみのない九州域外の人々に対し「JR九州の魅力的な鉄道」と、「高品質のJR九州ブランド」を広告宣伝する費用として考えれば、決して損ではなさそうです。

 鶏卵販売店舗が本拠地博多のほか、羽田空港、赤坂であることも、築いてきたブランドを活かす高付加価値路線の表れかもしれません。車両から卵のパッケージまで同じデザイナーを用い、ブランドイメージを構築している点もポイントでしょう。

 JR九州はこうした「鉄道力」を活用し、高いブランド性を求めながら事業の多角展開を続けていくと思われます。ということはつまり、そのブランドの「看板」となる本業の鉄道についても、引き続き磨いていかねばなりません。どのような魅力的な鉄道を見せてくれるかといった意味でも、今後のJR九州に注目です。

【了】

Writer:

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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