戦艦の“神話”を打ち砕いた事件──先代「プリンス・オブ・ウェールズ」を沈めた日本海軍の衝撃
イギリス海軍の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は、「オペレーション・ハイマスト」と名付けられた長期展開の一環として、2025年9月頃まで横須賀に寄港しています。同艦と同じ艦名を持つ先代の「プリンス・オブ・ウェールズ」は、80年以上前の第二次世界大戦中に建造された最新鋭の戦艦の一つでした。そして1941年12月10日、この艦を巡り、当時敵対していた日本との間で、世界史的にも重大な出来事が発生しました。
戦艦が「最強である」とう定説が変わった瞬間
イギリス海軍の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は、「オペレーション・ハイマスト」と名付けられた長期展開の一環として、2025年9月頃まで横須賀に寄港しています。同艦と同じ艦名を持つ先代の「プリンス・オブ・ウェールズ」は、80年以上前の第二次世界大戦中に建造された最新鋭の戦艦の一つでした。そして1941年12月10日、この艦を巡り、当時敵対していた日本との間で、世界史的にも重大な出来事が発生しました。

のちに「マレー沖海戦」と呼ばれるこの戦いで、イギリス東洋艦隊の主力であった戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と巡洋戦艦「レパルス」は、完全武装のまま航行中に日本海軍の航空機によって撃沈されたのです。これは世界で初めての出来事でした。
この「航行中であった」という点が極めて重要です。停泊中の戦艦であれば、それ以前にも撃沈例は存在しました。例えば、1940(昭和15)年11月11日にイギリス海軍がイタリア海軍に対して行ったタラント空襲や、1941(昭和16)年12月8日に日本海軍がアメリカ海軍に対して実施した真珠湾攻撃がそれにあたります。
タラントでは戦艦1隻、真珠湾では4隻が航空機の攻撃によって沈められましたが、いずれも無防備な状態で停泊していたところを奇襲されたものでした。そのため、「戦艦は重武装・重装甲であり、航行中であれば沈まない」という、一種の信仰とも言える考え方が当時も根強く残っていたのです。
イギリス海軍は、すでに北海や地中海においてドイツ・イタリア両軍の航空機からの攻撃を経験しており、航空戦力に対する耐性や自信という点では、日米の海軍よりもむしろ高かった可能性もあります。
特に「プリンス・オブ・ウェールズ」は、キング・ジョージ5世級戦艦の2番艦としてその年の1月に就役したばかりの正真正銘の最新鋭艦でした。イギリス海軍は、砲撃力よりも航空攻撃に耐える堅牢な設計を重視していたため、防御力の面では他国の戦艦に比べて一歩抜きん出ていると評価されていました。こうした背景から、航空戦力による護衛なしでも、マレー方面で上陸作戦を支援している日本船団を攻撃できると判断し、「レパルス」および駆逐艦4隻を伴って出撃したのです。
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