北海道新幹線レール締結式 鹿児島から北海道まで新幹線のレールが貫くも、立ちはだかる「東京駅の壁」

国鉄が直通運転をしなかった理由

 実はJRの前身である国鉄は当初、東海道新幹線と東北新幹線で直通運転を実施する考えでした。国鉄の資料によると1970年代初頭、東北新幹線の東京におけるターミナル駅をどこにするか「新幹線建設委員会」で検討が行われます。そこでターミナル駅の条件として「新幹線相互の直通を可能にさせること」という内容があり、その結果として東京駅に決定されたという経緯があるのです。

 当時、東海道・東北で直通運転を実施することにより新幹線の利便性や効率が向上し、東京駅のターミナル能力も最大限発揮できると考えられていました。

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新幹線総合車両センター(宮城県)に保存されている961形試験電車(2008年7月、恵 知仁撮影)。

 直通運転を念頭に開発された車両もあります。1973(昭和48)年に試作された「961形」です。西日本で使われている60Hzの電気、東日本で使われている50Hzの電気の両方で走行が可能――つまり東海道・東北新幹線の直通運転が可能な構造になっており、長距離運行を想定した寝台車まで用意されていました。

 しかしその後、直通運転を実施するとダイヤが乱れた場合、その影響が全国に波及することなどから得策ではないと判断され、両新幹線の線路は国鉄時代から一度も接続されることなく現在に至っています。

 北海道新幹線が開業し、鹿児島中央発の新函館北斗行き、なんて列車が走ったら面白いかもしれません。しかしここで述べたとおり東京駅で線路が繋がっておらず、また電気や信号などの違いで九州・山陽・東海道・東北・北海道すべての新幹線を走行できる車両が存在しないことから、その可能性は非常に低いのが現状です。

【了】

Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)

鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。

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コメント

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8件のコメント

  1. 仙台←→関西なら飛行機で行こうよー

  2. この役目敦賀~京都ができた時、北陸新幹線方面でやるのでは、東京と名古屋通りませんが。東京駅物理的にできるとは思うが、できないなら品川から新宿方面に新しく作るとか考えても。リニアができて札幌通した後だと思うが、何か新幹線自体がもう高速じゃなく中速になって、エネルギーと人口問題が先に来そうな気がする。

  3. 確かに、ダイヤの合間を縫って、一本か二本、直通を作れても、
    固有の速度が生かせるか、疑問ではある。しかし、実現すれば、
    それだけでも、高い集客が期待できる気もする。

  4. 鹿児島から函館北斗までと考えるより、東海圏から北海道に旅行する人がどれくらい居るだろうかと言うことですね。
    飛行機会社のデーターが参考になるだろうし、ただ季節によって客足の増減はあるでしょう。
    東京駅での電気設備とかは、今の技術でクリアできると思います。

  5. 電気設備の問題は北陸新幹線が長野行新幹線として開業した20年前の時点でクリアできている。問題なのはATCだけでこれも両方載せればクリア可能。つまり技術的な問題は全くない。
    最大の問題は東京駅の設備の維持費。(これこそがJR東海が東京駅のレール接続を断った理由)

  6. それ以前に国鉄時代に東北上越新幹線は東京駅に乗り入れできなかった。
    東京駅に乗り入れたのは平成になってから。

  7. 新横浜から宇都宮や高崎に出張する人はそれなりにいるから、需要はありそうな気がするけどな。
    リニアが出来て東海道新幹線に余裕が出来たら東北北海道新幹線が新横浜からまで走り出すかも。

  8. 最大の理由は商業的に成り立たないことだろう。
    ある距離を超えると鉄道より飛行機の方が有利になり、乗客がそっちに流れてしまう。
    名古屋~仙台間のような比較的短距離で見ても、途中の東京で大半の乗客は降りてしまい、技術的格差を埋める負担をしてもペイするほどの需要は期待できない。