消える日本船の世界一周 国際情勢に揺れるクルーズ船

世界で話題になった日本人の世界一周クルーズ好き。にも関わらずいま、日本籍船による世界一周クルーズが途絶えようとしています。その背景には“世界の動き”を受けたコース設定の難しさがありました。

世界一周を妨げる“ある地域”、対策を講ずるも

 しかしこの数年、「飛鳥II」を運航する郵船クルーズを悩ませてきたのはコースの選定でした。

 まずは、2000年代から出没し始めたソマリアの海賊対策。日本も商船の航路維持を目的に2009(平成21)年、自衛隊をジプチに派遣し船団の護衛活動を展開していますが、「飛鳥II」は安全対策のためスエズ運河の航行を断念。世界一周は全てアフリカ大陸の南端部、喜望峰回りとし、人気の地中海へ入る場合でもスエズ運河を通らず、西のジブラルタル側から大回りするコースを強いられていました。

 そうしたなか2015年春からようやく、紅海へ行く前に乗客全員を下船させ、陸路ツアーで移動させるといった安全対策を講じ、スエズ運河を通すことにします。

 しかし中東の治安悪化や、チュニスにおける観光客へのテロもあり、陸路ツアーは中止に。無寄港でスエズ運河を航行するコースに変更しますが、不安に思った多くの参加者がキャンセルするという事態に至っていました。

 中東、地中海における治安の悪化が、“ゴールデンコース”と呼ばれる中東から地中海へ抜ける典型的な世界一周クルーズを妨げたわけです。

 そしてついに「飛鳥II」は2016年のクルーズコース決定に際して、欧州には向かわないことになりました。

 同様に、「ぱしふいっくびいなす」を運航する日本クルーズ客船は、2015年初めにほとんど南半球だけを回る久々の世界一周を実施したものの、2016年のロングクルーズはオセアニアへ行くクルーズのみに限定しています。

 この結果2016年は、ほぼ20年ぶりに、日本国籍のクルーズ船が世界一周を実施しないことが確定しました。そして、さらに2015年へ入っての難民流出やフランスのテロなどもあり、「2017年以降もこうした状態が続くなら……」(郵船クルーズ)と、日本籍船での世界一周クルーズがしばらく途絶える可能性もささやかれています。

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