日本の宿命? 地震による高速道の盛土崩落 欧米より突出して多い利用率

日本で盛土が突出して多いワケ

 実はこの盛土構造、日本の高速道路は欧米にくらべて突出して利用割合が多くなっています。欧米は都市を一歩出れば田園が広がっており、道路も水路もまばら。よって地表面と同じ高さに高速道路も建設され、一般道や河川との交差部のみ盛土や高架で持ち上げています。

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盛土せずに地表面に建設されているドイツの高速道路・アウトバーン(2009年5月、清水草一撮影)。

 一方、日本は都市と田園地帯の区別が非常に曖昧で、平野部ではどこまで行っても家屋があり、密度の高い往来の確保が必要です。降水量も多いので水路の数も多く、「たまに道路を持ちあげる」程度ではどうにもなりません。よって、延々と盛土で持ち上げているのです。

 また起伏のある地形でも、斜面を削った土砂をその下の斜面に盛ることで道路平面を確保できますから、建設が容易です。日本の高速道路にとって、盛土は欠かせない構造なのです。

 当然、盛土にも耐震性は求められ、法面の傾斜角度や材料、締固めなどにさまざまな基準が設けられていますが、それでも盛土の耐震性は、高架構造などに比べると不確定要素が多くなります。かといってすべてを高架構造にすれば、工費は増大し景観的にも異物感が高くなります。盛土が大地震によってしばしば部分的に崩落するのは、「地震国・日本の宿命」といえるかもしれません。

 盛土は、工費が安いなどのほかにも利点があります。

 東日本大震災の際は、仙台東道路の盛土が津波の堤防および住民の避難場所として思わぬ活躍をしました。また崩落した場合、復旧が容易なのもメリット。なにしろ盛土は、基本的には「土を盛って締め固める」だけだからです。

 駿河湾地震のとき東名高速は5日間、東日本大震災の際は常磐道もわずか6日間で復旧し、世界から「ミラクル」と称賛されましたが、これが高架構造ならそうはいきません。1995(平成7)年阪神・淡路大震災で阪神高速が倒壊した際は、復旧に1年8カ月を要しました。それでも超高速復旧ですが。

【了】

Writer: 清水草一(首都高研究家)

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で、首都高研究家/交通ジャーナリストとして活動中。

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コメント

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1件のコメント

  1. 地盤沈下しないように、土の中に軽いEPS(発泡スチロール)を入れた盛土区間がどこかにあると聞いたのだか。その後普及してないのか?