実在した「徹頭徹尾異形の航空機」、実は中身もヤバかった! なぜこんな形になったのか
「先尾翼」と呼ばれる機体の前後が逆になったような外見と、中身も斬新な双発プロペラ機が存在します。なぜこのような形状となり、実用化後はどうなったのでしょうか。
型破り設計の理由、ちゃんとあった?
「スターシップ」のように、エンジンとプロペラを機体の後ろに配置する航空機は、客室内の騒音を抑えやすくなります。主翼の主要部材も胴体の後ろにあるので、部材を貫いた結果、客室内の床部分に段差が生じたり狭くなったりする心配もありません。さらに、複合材は金属に比べて軽くて丈夫なので性能アップにも寄与します。
しかし、当時はまだ複合材料を使う航空機は少なかったため、複合材自体の製造費や複合材用の工作機械は高価でした。そのうえ、金属は航空機用の材料として長い歴史を持つのに対して、複合材は「経年変化」へのノウハウが少なく、補修や部品交換への技術蓄積も手探りでした。その影響は大きくユーザーはすぐに飛びつかず「状況を静観する」姿勢となってしまい、予想していたよりも反応は良くありませんでした。
こうした「未知」への不安が大きい場合、斬新なスタイルはかえって不安感を大きくしてしまいます。
結局、機体価格はワンランク上のビジネスジェット機並みになったうえ手控え感も合わさり、「スターシップ」はわずか53機で生産を終えました。
なお、同機と後継になるはずだった「キングエア」シリーズの生産は、2025年現在も米レイセオン傘下になったビーチクラフトで続けられ、こちらはプロペラ・ビジネス機のほかに軍でも輸送機として使われるなど、幅広く活躍しています。
「スターシップ」はたとえ斬新な姿で新しい技術を用いても、“スタンダード”を超えるとは限らない例を示していると言えるでしょう。反面、複合材料は現在、多くの航空機の素材に多用されるようになりました。もし現代にこの機が登場すれば、斬新な姿も相まってもっと売れていたのかもしれません。
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