船はなぜ「パナマ」ばかり? 日本の海運会社が使っていても「外国籍」な謎
船舶に関する報道でバラ積み船や自動車運搬船など、大型船では、結構な確率で「パナマ船籍」であるケースを見かけます。なぜパナマの船が多いのでしょうか。
パナマ船籍にしておく利点とは?
船舶などに関する報道などでよく中米の「パナマ船籍」と聞くことが多い気がします。ただ、日本の海運会社が使っていたとしても、船籍はなぜか「パナマ」というケースもあります。なぜなのでしょうか。

実は日本船主協会(JSA)が発行している「SHIPPING NOW 2024-2025」を確認すると、2025年現在、日本企業が運行する2000総トン以上の外航商船は2211隻ありますが、実に50.5%、1116隻がパナマ籍です。日本船籍は311隻で全体の14.1%でしかありません。
海運会社の関係者に話を聞くと、こうしたある国の会社が船籍を他国に置くことを「便宜置籍船(べんぎちせきせん)」というそうです。なぜわざわざ他国に船籍を置くかというと、かつての某飲食店のキャッチコピーのような話ですが「速くて安い」が魅力だからです。
特定の国では、日本よりもはるかに簡単に、船舶登録が行える国があります。そして、そうした国は船舶に関する税金の負担も軽く、維持費が安価で済むケースが多いのです。
便宜置籍は、日本に関しては、ドルと円の変動相場制がスタートした1971年の「ニクソンショック」以降に一般化した方法で、当初は為替相場が円高に振れたことから、競争力確保のためコストの「ドル化」を進めたという経緯があります。
また、世界の先進国でも日本と同様に便宜置籍を使っています。それは税金以外にも魅力があるからです。実は、便宜置籍国では、国籍要件等に関する規制が緩やかで、賃金の安い外国人船員を比較的簡単な手続きで乗せられるといったメリットもあります。日本も例外ではなく、2025年現在の日本の商船隊においては船員の68.9%がフィリピン人で、ほかもインド人、ミャンマー人などで構成されており、日本人船員はわずか1.5%しかいません。
なお、世界の国別船舶登録数ですと、2025年現在ではリベリア船籍が16.1%で1位、パナマは2位で15.4%となっています。3位はマーシャル諸島の11.8%で、この3か国を合わせて「3大便宜置籍国」とすることもあります。
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