北朝鮮「横向きで新造艦進水させたら失敗した…」なぜ? 実はこの方法自体はレアケースではありません

北朝鮮の新型駆逐艦は横向きに進水する方式で横転事故を起こしましたが、実はこの方法、特段難しいという訳でも、とくに珍しいという訳ではありません。

湾内が狭い場合は有効な進水式の方法

 2025年5月22日、北朝鮮の清津造船所で行われた新型駆逐艦の進水式で、艦が横転するという事故が発生しました。この事故は金正恩(キム・ジョンウン)総書記が出席する目の前で起きたということで「犯罪行為である」と批判され、軍需工業部の幹部が拘束されたとの報道もあります。

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横向きで進水式を行う例(画像:アメリカ海軍)

 さてこの進水式ですが、日本でよく見る式典とは違う形態で行われたのも特徴です。どうやら船体を横向きで海上に浮かべる方法で行われたようです。なぜ、倒れそうな横向きで進水したのでしょうか。

 実は艦船において、横向きに進水する方法を取るのは珍しいことではありません。これは、水路の制約などにより縦向きの進水が難しい河川沿いの造船所では多用される方法で、アメリカ海軍が行った進水式の動画などを確認すると、横向きに派手に進水する艦艇などを確認できます。

 一方、海に面しているなど、艦船を浮かべる場所に余裕がある場合の進水は、縦向きに進水することが多数です。ここでは、ドックに水を注入する方法や、船尾からスライドレールやオイルを使用する手段が用いられます。またレールの設置が難しい場合などは進水ゴム製バルーンに乗せるケースもあります。

 対し、事故が起きた清津造船所に関しては、河川ではなく海に面した場所でしたが、湾内が狭く進水する場所が限られているため、横向きで行ったようです。

 横向き進水に関しては船体の重量を支える関係で、縦向きよりも広い範囲で進水させるための斜路「スリップウェイ」が必要で、着水直後も安定性が悪いため、転覆するリスクや水の浮力が突然かかったことによる損傷の可能性などがあます。そのため、進水する艦船には高い安定性と強度が求められるといわれています。

 ただし、比較的大型の貨物船なども、横滑り方式で進水式を行うケースもあります。5000トンクラスといわれる北朝鮮の新駆逐艦の横滑りで進水を行うのが無謀だったという訳ではありません。

 北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央通信は当初、進水式失敗の原因を船底に傷があったためとしていましたが、その後否定。事故原因は現在も調査中ですが、進水式の最中に、船尾下の輸送架台が予定より早く外れ損傷を受けたという話も出ており、新造艦の建造を急いたことによる経験不足なども指摘されています。

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