日本の国益を守れ! 国際条約で急ぎ建造「裏方的な海上保安庁船」知ってますか? 能登半島地震でも活躍まもなく退役へ
海上保安庁が保有する測量船「昭洋」が、東京お台場で一般公開されました。同船は、国際条約に関連して急きょ造られたとか。ただ、測量船とはそもそもどんな船なのかでしょうか。
海洋権益を守るために急きょ建造へ
1994年11月に発効した国連海洋法条約では、沿岸国の領海の基線から200海里までの海底を「大陸棚」と定めました。さらに国連の大陸棚限界委員会の審査で、海底の地形・地質が一定の条件を満たしていると認められた場合には、同委員会の勧告に基づいて200海里を超えて大陸棚を設定できます。

沿岸国は、国連海洋法条約に基づいて設定した自国の大陸棚で天然資源を開発するための「主権的権利」を行使できる一方、それ以外の国や機関は、同意なしに大陸棚に対して探査や開発を行うことはできません。周囲を海に囲まれた日本にとって、漁業資源に加えて、レアメタルなどの豊富な鉱物資源が眠るとされている大陸棚の設定は、海洋権益を確保するうえで不可欠でした。
しかし、日本が国連海洋法条約の批准に向けて動いていた1995年当時、大陸棚の調査能力を持つ測量船は「拓洋」(2400総トン)1隻のみ。大陸棚の延長を申請する資料の提出はタイムリミット(当初は2006年7月、後に2009年5月)が設定されており、調査能力を増強する必要がありました。
これを受け、初代「昭洋」(2016総トン)の代替として1995年度補正予算で建造が決まったのが今の「昭洋」となります。同船は大陸棚だけでなく、火山活動や活断層、海洋汚染といった幅広い調査活動を行うことを想定していたため、船体の大型化が図られています。こうした船舶としての特徴と、社会的な貢献が評価され1998年の「シップ・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。
2011年3月に発生した東日本大震災で、「昭洋」は釜石港や宮古港に派遣され、津波で被害を受けた港内の水路測量を実施。緊急支援物資の受け入れ拠点となる各港の復旧を支援しました。さらに「福島第一原子力発電所事故」に伴う放射能調査にも投入され、福島県沖や茨城県沖を含む日本周辺海域で海水サンプリングと分析を行っています。
近年では噴火により拡大した西之島(東京都小笠原)で、噴火が収まった後の2015年と2016年に調査を実施。また、2024年1月の能登半島地震では、地震直後に現地へ派遣され航路障害物の調査を実施して港湾の早期供用開始に貢献し、その後も能登半島周辺の海底地形調査を行って海底の地滑りの痕跡を明らかにしました。
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