「艦艇」に全集中!大型商船は「作りません」 造船の街“稼ぎ”の変化が浮彫りに 三菱長崎
三菱重工業長崎造船所の新所長が「長崎で大型商船を手掛けることはない」と述べました。今後、艦艇の建造が中心となるには理由があるようです。
商船の建造は下関へ集約
特殊機械部門では、航空機や水上艦に搭載される魚雷や垂直発射装置(VLS)の開発、製造、アフターサービスを担っており、もがみ型に搭載される水中無人機(UUV)である自律式水中航走式機雷探知機(OZZ-5)もここで製造されています。これらの取り組みから、日本の防衛を支える中核であることが伺えます。

一方で、民間船舶に関しては「現時点で長崎において、以前のような大きな商船を手がけるという計画はない」と藤田所長は明確に否定しました。
三菱重工の長崎造船所は、長らく同社の造船事業の拠点として、艦艇から官公庁船、商船まで多種多様な船種を手がけていました。特に、全長990mもの建造ドックを持つ香焼(こうやぎ)工場はLNG(液化天然ガス)船やLPG(液化石油ガス)船などを建造。本工場(立神《たてがみ》)でも、クルーズ船や全長200mを超える大型フェリーの建造実績があります。
これらの中には、さやえんどう形の船体にりんご形の貨物タンクを有するサヤリンゴ型LNG船「Diamond Gas Orchid」、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」「アイーダ・プリマ」、フェリー「はまゆう」といった船も含まれています。
しかし中国・韓国の造船所の台頭による市場環境の変化や、クルーズ船建造を巡る巨額損失などが重なり、採算が悪化。体制見直しを迫られたことにより、商船事業の大半は、2018年に設立された三菱造船に引き継がれ、2022年末には香焼工場の新造船エリアを大島造船所に譲渡しました。こうした経緯からLNG船やLPG船の建造からは手を引いており、現在では下関造船所が大型フェリーやRORO船を中心とした商船の新造を担っています。
藤田所長は、「かつては商船が長崎造船所において非常に大きな事業だったが、現在の事業環境を踏まえ、選択と集中を進めた結果、もともと複数あった拠点のうち、商船の建造は下関造船所に集約する形となった。これはポートフォリオの最適化だと考えている」と述べました。
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