「水素を燃やして走る“フェリー”」2026年完成へ 浮かぶ水素ステーションも!? ここまで進んだ“海の水素社会”
水素で動くフェリーが国内で実現しようとしています。ベルギーの海運大手と日本の4社が、水素を燃料として使用する舶用エンジンの普及を図ります。その先、水素エンジンはどう広がっていくのでしょうか。
水素フェリーは6気筒エンジン×3機
ジャパンハイドロの神原満夫社長は「常石造船の構内に水素を燃料として動かすことができるテストベンチ『水素エンジンR&Dセンター』を設けた」といいます。今回の協業の中で担うのは、我々のテストベンチで認証に必要なエンジンを動かして、排ガスや出力といった能力の確認チェックを行うことがメイン」と説明し、水素燃料エンジンの信頼性を高めるサポート体制が国内で構築していることを強調しました。

同社の青沼 裕CEO(最高経営責任者)も「今回の4社協業の枠組みは新しいエンジンを開発したり、新技術を育てたりする側面より、水素社会が待ったなしという状況で、いかに早く社会実装を進め、開発済みの製品を広めていくというところが大きなポイント」だと説明します。
BeHydroの水素混焼エンジンに関しては、ベルギーのアントワープ・ブルージュ港で2023年11月から就航しているタグボート「Hydrotug 1」に搭載されています。混焼タイプの最大の特長は「運用上の柔軟性」で、水素の供給が受けられない場合でも、従来のディーゼル燃料のみで航行を継続できるため、水素インフラが未整備な過渡期の日本では現実的な選択肢となるでしょう。
また、水素の混焼率は操船者が手動で設定するのではなく、エンジンが運転状況に応じて自動で最適化するとのこと。
日本では今年3月に常石造船常石工場で混焼タイプV型12気筒2基を搭載したタグボート「天歐」が進水しており、7月に竣工する予定です。
もう一つは水素専焼エンジンを搭載する船としては、日本財団のゼロエミッション船プロジェクトの一環として、ジャパンハイドロが建造を計画しているフェリーがあります。
同船には専焼タイプ直列6気筒エンジン3基の採用が決まっており、常石造船で2026年末に竣工する見通しです。具体的な船体規模や就航地などは「まだ明かせない」(青沼CEO)とのこと。
また、ジャパンハイドロはすでに水素混焼エンジンを搭載する小型旅客船「ハイドロびんご(Hydro BINGO)」(19総トン)を就航させており、タグボート「天歐」とフェリーが完成すれば同社の水素燃料船は計3隻となります。
「水素エンジンはありがたいことに、非常に多くの問い合わせをいただいている。ただ、輸入エンジンという所で顧客から保守面での不安の声があった。4社の枠組みとして実際に水素エンジンを使った船が作られ、それを支援する体制が出来たということを踏まえ、営業をかけていく」(青沼CEO)
こうした水素燃料船に加えてジャパンハイドロは移動可能な洋上水素ステーションの開発を行っており、水素エンジン導入に向けた課題の解決を図ろうとしています。
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