ルパン三世「永遠のライバル」愛用のパトカーだけ日本車なぜ?「銭形突撃隊」のトラックにも隠された逸話あり

『ルパン三世 カリオストロの城』のエンディングで、銭形警部の愛車として登場する「ブルーバード」パトカーと、部下である「銭形突撃隊」が乗るトラック。これらも、じつは知られざるエピソードがありました。

「銭形突撃隊」のトラックは作画監督の趣味

「銭形突撃隊」の移動手段である「C60L」は、標準ベッド(荷台)の「C15」を4WDとした上で、ホイールベースを延長したロングベッド仕様のトラックで、終戦後、日本に進駐してきたカナダ軍やオーストラリア軍、ニュージーランド軍などの英連邦諸国の軍隊が使用していました。

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410型「ブルーバード」は、イタリアのピニンファリーナにデザインを依頼したが、欧州車風の「尻下がり」のリアエンドが日本市場では受け入れられず、販売で苦戦する(画像:日産)。

 戦後間もない時期は、各都道府県警が進駐軍の払下げ車両を警察車両として使用することが珍しくなく、「銭形突撃隊」の「C60L」もそのような経緯で埼玉県警に配備された車両なのでしょう。

 なお、この映画の作画監督を務めた大塚さんは、終戦直後に地元・島根県でこのクルマを見ています。当時、16歳だった大塚少年は、時間があると機関車のスケッチを趣味としていましたが、終戦後は占領軍の軍用車両に興味の対象が変わります。彼が残した膨大な軍用車のスケッチの中に「C60L」もありました。

 のちに本業の傍らで軍用車両研究家になった大塚さんは、趣味が講じて一時アニメーターを辞め、模型メーカーに就職してプラモデル開発に携わることになります。大塚さんはCMPトラックをかなり気に入っていたらしく、彼が製品企画を担当したプラモデルの中に「C15」もありました。

 大塚さんが勤めた模型メーカーは業績不振で数年で廃業しますが、のちにイタレリ社が金型を入手し、この製品は現在も販売を続けています。模型メーカーを退職した大塚さんは、再びアニメーターに復帰し、『カリ城』にて「銭形突撃隊」のトラックに「C60L」を登場させたのです。

 日産410型「ブルーバード」もCMP「C60L」も、脇役の脇役でしかありませんが、こういう細かなところでのチョイス、こだわりに制作者サイドの遊びがちりばめられているのが、『ルパン三世 カリオストロの城』の面白さなのかもしれません。

【かつては日本を走ってた?】これが「銭形突撃隊」が愛したトラックです(写真)

Writer:

「自動車やクルマを中心にした乗り物系ライター。愛車は1967年型アルファロメオ1300GTジュニア、2010年型フィアット500PINK!、モト・グッツィV11スポーツ、ヤマハ・グランドマジェスティ250、スズキGN125H、ホンダ・スーパーカブ110「天気の子」。著書は「萌えだらけの車選び」「最強! 連合艦隊オールスターズ」「『世界の銃』完全読本」ほか」に

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