本当にイラン核兵器作れなくなった? ステルス爆撃機の応援まで得たイスラエル でも米情報機関は悲観的な評価
イランの核兵器開発能力を徹底的になくそうと背製攻撃を行ったイスラエル。最終的にはアメリカがB-2ステルス爆撃機と地中貫通爆弾まで投入しました。しかし、それでも米情報機関は厳しい見方をしているようです。
イランの核開発能力は失われたのか?
MOPは、重量13.6tもある超大型の爆弾で、通常兵器としては地球上でもっとも貫通力の高い兵器ともいわれます。強化されたコンクリートで隠蔽されていても、それを貫いて下に隠された重要兵器や施設をも破壊できる能力を持ち、理論上は核開発の「最終拠点」にも打撃を与え得る数少ない攻撃手段でした。

前述したように、戦争は12日間という短期間で終了し、イスラエルは当初の目標を完全に達成し、勝利したと発表しています。しかしイスラエルとアメリカによる軍事行動が、果たして「戦略的成功」となり得たのか、という点は、いまだ明らかではありません。
アメリカのトランプ大統領は、戦いの後で「イランの核開発能力を少なくとも10年は後退させた」と豪語しています。しかし、一方でアメリカ国防総省の中間評価はより冷静で、「実質的に2~3年程度の後退に留まった」と明記しています。さらに懐疑的なのはアメリカ国防情報局(DIA)で「破壊されたのは一部施設と技術者群にすぎず、(イランの核開発能力については)数か月後退させたに過ぎない」という厳しい評価を下しています。
これらを鑑みると、イランの核開発能力が「失われた」と断定するのは、いささか早計だと言えるでしょう。むしろ、12日間戦争がもたらしたのは、核武装への「一時的な遅延」や「改めての核武装への決意」かもしれません。
戦争とは、戦術的な勝利と敗北だけでは測れません。真の帰結は、時の経過と共に姿を現すものであるため、12日間戦争の「結論」は、これから数年をかけて徐々に明らかになるでしょう。
イランは、核の扉を再び叩くことになるのか、問いは、まだ残されたままです。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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