LNG燃料船、普及進むか 立ち遅れた日本、厳しくなる排ガス規制へまったなし

もはや「待ったなし」の日本

 2016年現在、海運技術の向上や海洋汚染の防止などを目指す国連の専門機関である国際海事機関は、SOX(硫黄酸化物)の全海域規制を検討しており、早ければ2020年にも実施される見込みです。

 国際海事機関による規制を待つまでもなく、バルト海や北海、北米沿岸海域などにおいては、すでに船からの排気ガス規制が施行されています。

 たとえばバルト海域を走るカーフェリーとして、すでにLNG燃料船が就航しているのみならず、新造船ではLNGエンジンが一般的なものとして採用され始めています。世界最大のクルーズ会社であるカーニバル・コーポレーション(アメリカ)は、数隻の大型クルーズ船に重油とLNGによるデュアルフュエル(二元燃料)エンジンの採用を決めました。ほか、各国で自動車運搬船のエンジンとして採用されつつあります。

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カーニバル社の「コスタ・フォーチュナ号」。主機関は現状、ディーゼル・エレクトリック方式だが、こうした大型客船にもいずれLNGエンジン化の波は押し寄せるだろう(写真出典:カーニバル・コーポレーション)。

 これら世界の潮流に対応し、日本におけるLNG燃料船の普及を本気で推し進めるには、もはや待ったなしの時期に来ているといえるでしょう。

 また、エンジン自体の開発もさることながら、もっとも肝心なのは、船への燃料供給体制です。入港した港でLNGの供給を受けられなければ、船は止まってしまいます。まずはフェリーのように使う港が決まっている船種から、港やガス会社が協力して安全性が担保された供給体制を確立することが必要です。世界中の港に寄港する一般商船の場合、多くの港で供給体制が整備されなければ、LNG焚き船の普及は進まないでしょう。

 そうしたなか現在、先述のとおり三菱商事や日本郵船、三井物産などが動き始め、遅まきながら日本企業によるLNG燃料船への取り組みが本格化しつつあります。日本中、ひいては世界中の港にガソリンスタンドならぬガススタンドやガス燃料供給船を整備することは、海運、造船、エンジン業界ばかりでなく、海事業界総ぐるみの壮大なプロジェクトになるでしょう。今後の展開が注目されます。

 なお、LNGを輸送するタンカーは、その多くが輸送中に気化した積み荷のLNGを燃料に使っています。

【了】

Writer: 若勢敏美(船旅事業研究家)

1949年生まれ。業界紙を経て1980年、海事プレス社へ入社。1989年、雑誌『CRUISE』創刊に参画し、翌年から編集長。2008年、海事プレス社の社長へ就任。2012年退任。この間、取材、プライベートを含め35隻の客船に乗船して延べ55カ国を訪問。地方自治体や業界団体主催の講演会などに多数出席。

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コメント

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1件のコメント

  1. 座礁したときなんか、重油漏れの海洋汚染わ少ないかも。