「世界でもっと忙しい管制塔」どうさばく? 滑走路の使い方もカオス…支えるのは「海外では当たり前の優秀装備」の存在
アメリカにこの航空ショーの期間だけ「世界で最も忙しい管制塔」になる空港があります。この期間は滑走路の運用などもかなり特殊になりますが、なぜこの発着量をさばくことができるのでしょうか。
ADS-B何がスゴイのか
空港などではレーダーを使用して航空機の位置を判別していますが、一つの画面上で複数の航空機を識別するため、航空機にはトランスポンダーと呼ばれるレーダー応答装置を搭載しています。これによりレーダー画面上では複数の航空機の場所と高度が表示できるようになりましたが、この方法には2つの大きな欠点がありました。それは、トランスポンダーは地上では使用できないこと。そして、複数の航空機が同じ空域を飛んでいても互いの位置がわからないことでした。
そこで近年各国で普及しているのがADS-Bです。ADS-Bは自機の位置を経度と緯度の座標データとして発信します。このデータは管制官だけでなく周囲の航空機もADS-B 受信機を搭載することでリアルタイムにモニターすることができます。さらにADS-B は地上でも使用できるという大きなメリットも。つまり、視界の悪い気象条件でもほかの機体の位置が画面に表示される仕組みです。
近年、諸外国では混雑空域を飛行する際にADS-Bの搭載が義務化されました。アメリカでは小型機にもADS-B の普及を促すために、1機あたり、なんと2度にわたり補助金が支給されたのです。
一方このADS-Bの実装が、あまり進んでいないのが日本です。この問題点が浮き彫りになったのは2024年に羽田空港で起きた海上保安庁機とJAL(日本航空)機の衝突事故でしょう。報道によると、JAL機のパイロットからは着陸直前の最終進入時に海保機が見えなかったこと、さらに羽田空港の管制塔も海保機が滑走路に入っていたことを把握していなかったとされています。
そしてこのとき、海保機にはADS-Bが搭載されていませんでした。日頃ADS-Bを使用している諸外国の航空関係者からみると、もしADS-Bが導入されていたらこの事故は防げた可能性が大きいというのが共通の認識です。
コメント