「本州最北端になるはずだった鉄道路線」なぜ幻に? 跡地に行ったら「あ、でも残り香あるわ」
大湊線の下北駅は「本州最北端の駅」として知られていますが、実は下北駅よりさらに北へ延び、下北半島の突端まで到達するはずだった幻の鉄道が存在しました。どういった経緯があったのでしょうか。
現存する大間線の遺構たち
大間線が開通することはありませんでしたが、当時の工事で作られた建造物は今でも現存しており、遺構としてその姿を見ることができます。

観光地として有名なのは下風呂温泉にあるアーチ橋で、2005年(平成17年)にはメモリアルロードとして整備されました。この遊歩道は高台にあるため、周辺の下風呂温泉街を一望することができ、中央には再現された線路と鉄道駅舎風の足湯があり無料で入ることができます。
平成の時代に観光地として再整備されたため、遺構そのものとしての価値はあまり高くないですが、このメモリアルロードの東側にある階段は、昭和時代の工事で作られたモノであり、それが現在でも地元民の生活路として使われています。
一方で遺構としてのアーチ橋を見たいのであれば、大畑地区の隣にある二枚橋にあるアーチ橋が挙げられます。下狄川に掛かるこの橋は、当時のままの状態で残っており、上部は草に覆われておりますが、橋脚部分などから当時の面影を感じることができるでしょう。
なお、赤川村の小赤川にもアーチ橋が残っていましたが、2021年8月に発生した大雨による小赤川橋の復旧作業の為に、こちらは撤去されています。
これら以外にも、国道279号沿いには大小さまざまな「大間線」の遺構が残っていますが、正確な記録は無く、また現地は見学のための駐車スペースや安全措置がなされていないため、実際に現地を訪れるのは簡単なことではありません。
トンネルについても3箇所が掘削されて現存しているそうですが、内部は劣化による破片落下や崩落の危険性があるため、入り口は封鎖され立ち入ることはできません。
完成することなく終わってしまった「大間線」ですが、大間とその周辺は下北ジオパークとして観光業にも力を入れており、その雄大な自然を楽しむためにドライブによるツーリングコースとしても有名です。もし、国道279号を通行する機会があったら、未完で終わった「大間線」についても思いを巡らせるといいかもしれません。
Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)
雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info
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