LCCより安い「ウルトラLCC」って何だ!? “安かろう悪かろう”なのか? 米大手は“1年で2回の破綻”
アメリカの超格安航空会社(ULCC)大手のスピリット航空が2025年8月29日、経営破綻しました。日本では耳慣れない「ULCC」とは、どのような業態なのでしょうか。
ULCCは「安かろう悪かろう」なのか
こう聞くとULCCは「安かろう悪かろう」だと思いがちですが、筆者がULCCとは知らずに利用して大手航空会社と変わらないほどのサービスだったのがサンカントリー航空です。全米航空協会(NACA)が挙げるアメリカのULCCのリストに入っており、他はスピリット、フロンティア、アレジアント・エア、アベロ航空、ブリーズ・エアウェイズが名を連ねています。

NACAは「ULCCの平均基本運賃は50ドル(1ドル=147円で7350円)強だ」と説明しており、これは航空券としては“驚安”の水準です。
筆者は2016年に西部ポートランドから駐在先のニューヨークへ戻った際、ハブ(拠点)空港の中西部ミネアポリス乗り継ぎのサンカントリーが比較的安かったので選びました。目が飛び出るほどの安値ではなかった半面、飲み物のほかに菓子も無料で配ってくれ、客室乗務員の接客も良かったのが印象に残っています。
また、LCCのジェットブルーも飲み物の他にポップコーンのような菓子を提供し、客室乗務員は「欲しければおかわりもありますよ」と呼びかける大盤振る舞いでした。
すなわち、新車にたとえるならば最低限の装備しか付いていないモデルがULCC、基本的な装備を付けたのがLCC、装備をより充実させたのが大手航空会社というコンセプトの違いがあると言えそうです。
ただ、激しい競争にさらされる中で、一部のULCCやLCCは顧客の歓心を買うためにサービスを充実させた結果、同じ業態内でも「サービス格差」が生じています。
他方で、スピリットはULCCの本来のコンセプトを愚直に守り続けた結果、待ち受けていたのが1年以内に2度の経営破綻でした。
敵失に乗じるようにフロンティアは2025年8月26日に20路線の新設を発表し、その中にはスピリットと競合する区間が含まれています。
フロンティアはこの路線拡大で「アメリカの20の大都市圏で首位の低運賃航空会社になる」と息巻いています。短期間に繰り返した破綻がもたらした信用失墜で視界不良になったスピリットの経営は、逆風から抜け出せるのでしょうか。
Writer: 大塚圭一郎(共同通信社経済部次長・鉄旅オブザイヤー審査員)
1973年、東京都生まれ。97年に国立東京外国語大学フランス語学科卒、共同通信社に入社。ニューヨーク支局特派員、ワシントン支局次長を歴任し、アメリカに通算10年間住んだ。「乗りもの」ならば国内外のあらゆるものに関心を持つ。VIA鉄道カナダの愛好家団体「VIAクラブ日本支部」会員。
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