LCCより安い「ウルトラLCC」って何だ!? “安かろう悪かろう”なのか? 米大手は“1年で2回の破綻”

アメリカの超格安航空会社(ULCC)大手のスピリット航空が2025年8月29日、経営破綻しました。日本では耳慣れない「ULCC」とは、どのような業態なのでしょうか。

超格安「ウルトラLCC」トランプ関税も逆風に

 業績の低空飛行が続いていたアメリカの超格安航空会社(ULCC=ウルトラ・ロー・コスト・キャリアー)大手のスピリット航空が2025年8月29日、日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条の適用を申請して経営破綻しました。同社は24年11月にも破産法11条の適用を申し立て、25年3月に手続きを脱却したばかりで、1年以内に「二次破綻」に追い込まれました。

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スピリット航空の旅客機エアバスA320シリーズ(大塚圭一郎撮影)

 アメリカではドナルド・トランプ大統領が輸入品に高額な関税を課したことで物価上昇が加速するとの懸念が高まり、消費者がレジャー向け支出を減らしていることが航空業界の逆風になっています。スピリットの2025年4―6月期の最終的な損益を示す純損益は2億4500万ドル(1ドル=147円で約360億円)の赤字に陥り、現金および現金同等物が4億700万ドルまで落ち込みました。

 そうしたなか、スピリットが8月11日発表した四半期報告書に「継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)に疑義がある」と記されたことで信用不安が加速。業績低迷が続くなかでキャッシュバーン(現金燃焼)が加速し、格付け会社ムーディーズは8月22日にスピリット株の格付けを信用度が低く、債務不履行(デフォルト)の可能性が高いとする投機的等級(ジャンク級)に格下げしました。

 こうして予想通りの破綻劇となった半面、スピリットはたびたび“求婚”される人気者でした。

 ULCCのフロンティア航空の親会社フロンティア・グループ・ホールディングスとの合併交渉が進められていた2022年、格安航空会社(LCC)のジェットブルー航空が横やりを入れました。

 ジェットブルーは22年7月にスピリットを38億ドルで買収することで合意したと発表しましたが、司法省は日本の独占禁止法に当たる反トラスト法違反で買収阻止を求めて23年3月に東部マサチューセッツ州の連邦地方裁判所へ提訴。司法省はこの買収が実現すればLCC業態に集約され、「ULCC業界全体の座席数の約半分が削減され、多くの旅行者にとって運賃上昇を招く」と主張しました。

 連邦地裁は2024年1月、司法省の主張を認めて買収を認めない判決を出し、ジェットブルーは同年3月にスピリットの買収を断念しました。この時点で、業績低迷が続くスピリットが“再浮上”する命脈が絶たれていたのです。

【え…!】これが「ウルトラLCC」の価格です!(写真)

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