三菱の大型客船撤退 日本の造船業、いまが「我慢」のしどころか

日本の造船業、いま問われている本当のこととは?

 しかしいま、三菱重工が大型客船で白旗を上げたほか、川崎重工もブラジルや海洋事業への多角化でつまずき2016年度上半期は赤字決算を強いられたため、「造船を継続するかどうかの検討をする」と、流行り病のように、いわば祖業の積極的な展開を諦めるかのような発言が行われています。

 すでに、事業部門としては数パーセントのシェアしか持たなくなった、重工各社内における造船事業。その経営陣は、先述した戦略が実を結ぶまで待つことができなくなっているのかもしれません。

 また一方で、業界内では三菱重工が受注すると思われていた海上自衛隊のイージス艦2隻をめぐり、船価の引き下げが行われたうえでJMU(IHI)が受注したことについて、「ダンピング受注と言わざるを得ない」(造船業界筋)という、過当競争が始まっているとの見方も出ています。

 日本の重工各社における造船部門が、危機に遭遇しているのは間違いありません。とはいえそれは外部要因、つまり「造船不況による危機」というだけではありません。

 重工各社における造船部門の現況について問われた、日本造船工業会の村山会長(川崎重工会長)は、2016年10月11日(火)の定例記者会見で、各社ともに事業見直しという「体質改善のための産みの苦しみ」の過程にあると説明しています。とりわけ日本では、「為替にもよるが、韓国よりも人件費が安い」といわれる専業造船所が力をつけており、村山会長が語る体質改善は、重工各社の造船部門にとって、まさにその真っ最中にあるといえます。

「体質改善」での生き残りを目指すのなら、「我慢」こそが、いま、重工各社の経営者自身に問われている、といえましょう。

【了】

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