フェリーの「ザコ寝」なぜ減った? 個室化のニーズは2方向から「畳敷きの大部屋」残す船会社も
かつてのフェリー旅の象徴だったカーペット敷きの「雑魚寝部屋」。最近の新造船では見かけなくなりましたが、その背景には何があるのでしょうか。
トラック運転手のニーズと「楽しむ船旅」がフェリーを変えた!
2025年11月、「新日本海フェリー」の新造船「けやき」が就航します。SNSなどで話題となったこの船もまた、近年の新造船の潮流を汲み、プライバシーを重視した客室が中心となっています。

かつて長距離フェリーの代名詞だった「雑魚寝部屋」は、急速に姿を消しているようです。
そもそも雑魚寝部屋とは、個々の仕切りもないカーペット敷きなどの大きな部屋で多数の乗客が横になる、最も安価な船室の俗称です。船舶会社では、2等客席の大部屋やエコノミーなどといった名称を用いています。
こうした作りゆえに、そのぶん運賃・料金は低め。そうしたメリットから、愛用する乗客も一定数いました。ではなぜ、雑魚寝部屋はなくなっているのでしょうか。その背景には、2つの大きな変化があります。
ひとつは、物流業界からの強い要請です。ドライバーの労働時間に上限が課される「物流の2024年問題」への対応として、運転手が法的に定められた休息時間を確保しながら貨物を長距離移動させられるフェリーの価値が急上昇しています。
フェリー各社は、運送会社に選ばれるため、一般の乗客エリアから完全に分離された、トラック運転手専用の施錠可能な個室や専用ラウンジ、浴室などを拡充しています。
もうひとつの変化は、一般の乗客がフェリーに求める価値の転換です。単なる移動手段ではなく、船旅そのものを楽しむカジュアルクルーズへの需要が高まっています。
商船三井さんふらわあの新造船「くれない」では、クルーズ客船「にっぽん丸」の改装も手がけたデザイナー、渡辺友之氏が内装を担当しました。さらに「阪九フェリー」の「せっつ」は展望露天風呂を設けるなど、各社は競って船内空間の魅力を高めています。
安定した貨物輸送の収益が、こうした豪華な旅客設備への投資を支え、それがさらに新たな観光客を呼び込むという好循環が生まれているのです。
では、こうした船旅の変化を受けて、かつての雑魚寝部屋は今どうなっているのでしょうか。
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