フェリーの「ザコ寝」なぜ減った? 個室化のニーズは2方向から「畳敷きの大部屋」残す船会社も
かつてのフェリー旅の象徴だったカーペット敷きの「雑魚寝部屋」。最近の新造船では見かけなくなりましたが、その背景には何があるのでしょうか。
消えゆく雑魚寝部屋、進化する廉価客室
雑魚寝部屋が減る一方で、手ごろな価格で移動したいという需要に応えるため、プライバシーに配慮した新しいタイプの廉価客室が登場しています。

多くの新造船で採用されているのが、カーテンやロールスクリーンで仕切られたカプセルホテル型の寝台です。個別の照明や電源コンセント、USBポートも完備され、安価ながらプライベート空間を確保できるため、特にひとり旅や若者層から人気を集めています。
こうした個室化の流れは、2006年に施行された「バリアフリー新法」や、コロナ禍を経た感染対策意識の高まりによって、さらに加速しました。
では、伝統的な雑魚寝部屋は完全になくなってしまったのでしょうか。
じつは一部のフェリーでは今も体験することができます。「名門大洋フェリー」ではエコノミーとして、また新日本海フェリーや商船三井さんふらわあの一部の既存船では、カーペット敷きの共同室が残されています。
なかでも、阪九フェリーは新造船を含めたすべての船で、畳敷きの共同室である「スタンダード和室」を維持しており、最も伝統的なスタイルを今に伝えています。
一方で、2021年に新規航路として就航した「東京九州フェリー」のように、最初から雑魚寝部屋スタイルの客室が一切存在しない事業者も登場しています。
長距離フェリーは、ただ安く移動する手段から、トラック運転手には快適な休息を、観光客には非日常の体験を提供する ”浮かぶ目的地” へと、その姿を大きく変えつつあるのです。
その進化は留まることはありません。今後は高速Wi-Fiといったデジタル体験の向上や、環境に配慮したLNG燃料船の導入などが、新たな競争力の鍵となっていくことでしょう。
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