米航空行政に激震「アマゾンのドローンがクレーンに衝突」、どんな影響が? 新法激論中に起きた“惨事”
アメリカで、宅配大手「アマゾン」のドローンがクレーンに激突するという事故が起きました。今回の事故は、同国内の航空行政に大きな波紋を広げています。
クレーンのアームは「認識不可」?
2025年10月2日、アメリカ・アリゾナ州で大手ネット通販アマゾンが配達に使用している最新型ドローン「MK30」2機が、地上に停めてあったクレーンに激突して大破し、機体の破片が地上に落下するという事故が起きました。市街地で起きた事故ではあったものの、機体の破片により負傷した人がいなかったことは幸いでしたが、事故現場付近に居合わせた一人が煙を吸い込んで救急搬送されたと報じられています。

今回墜落したMK30型ドローンは、アマゾンが使用している最新機種で、38.5kgの機体重量を持ちます。資格を持つリモートパイロットの管理下で、AI(人工知能)を用いた自動操縦が採用され、地上の障害物がある場合にはパイロットの遠隔操作で回避しながら、荷物を無人で空輸するシステムを構成しています。また、ドローンの機能には、電線を障害物として認識することが難しいため、あらかじめプロットされたデータと照合しながら飛行するのです。
ところが、今回の事故で浮き彫りになったことは、空に伸びたクレーンのアームも識別が困難な障害物であることです。
アメリカ連邦航空局(FAA)は事故発生後、直ちに事故調査を開始しましたが、今回の事故は航空行政に大きな波紋を広げています。
現在、各国ではドローンの本格的な商業運航を目指した新たな航空法が議論されています。その主な目的は無人飛行を行うドローンを地上の操作員から目視できない領域においても安全な飛行を確立することです。
アメリカではFAAがおよそ4年の歳月を費やして作成した改訂航空法の原案が今年の8月、連邦航空法108条(案)として公表されています。これはドローンに関する法律で、現行の108条は大雑把にいうと「ドローンでも、空を使うなら“空の交通ルール”を守れ。守らなかったら責任は運航者が負う」というもの。一方で新たな原案は安全を確保するため、ドローンを飛ばすルールを厳格化させるというものです。
改訂航空法の原案については現在関係者からの意見募集が行われています。これには100万通を超える意見が寄せられているそうで、関心の高さが伺えます。その多くが108条(案)への否定的な内容であるとも公表されています。
その理由は、有人の航空機と共有する空域内で無人機が有人機に対して優先されること、管制空域では有人機の場合、ADS-Bに代表される自機の位置情報を周囲に告知する機器の搭載が義務付けられていますが(日本では未施行)、無人機には義務化されていないことなどです。こうした議論が進んでいる最中にアマゾン機の事故が発生しました。
現在、制定に向けて作業が進められている連邦航空法108条(案)の改訂に大きな影響が及ぶことは必須でしょう。今回の事故発生を受けてアメリカ連邦航空法の改訂は遅れる可能性がありますが、この影響は世界に波及するものと筆者は予想しています。
その理由は各国の航空当局がアメリカの航空法の成り行きに注目しているからです。
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