トラックの“あり得ない”使い方 「日本独自の特装車」とは? 外国人ならパニック必至!?
イベントなどでよく見かける地震体験車(起震車)は、実は世界的には例を見ない日本ならではの特殊なクルマです。阪神・淡路大震災をきっかけに導入が進んだこの特装車には、どのような機能や役割があるのでしょうか。
地震体験車の価格は?
地震体験車には既製品というものはなく、受注生産品。仕様は様々なバリエーションがあります。実は、日本の防災技術研究と自動車産業の技術の粋が詰まった特装車なのです。
2000年代以降から高性能化が進み、震度7まで再現可能になり、ただ揺らすだけでなく、任意の揺れ方設定や過去の地震データから、実際にあった地震を前後・左右・上下の3次元の揺れで忠実に再現すること、南海トラフ地震など将来想定される地震のシミュレーションも可能になっています。
この車両の調達価格は約3000万円とのことですが、特殊な受注生産品のため値段は上下するようです。ちなみに高規格救急車が約1000万円、自衛隊が使っている軽装甲機動車が約3000万円といわれます。
約3tのシャーシに約4tの起震装置と体験者を載せて、自ら震度7で揺らすというのは通常のトラックにはあり得ない使い方であり、それゆえに車体にかなり負荷が掛かり故障も多いといいます。構造上どうしてもコネクターや端子が弱点になっているようです。あちこち巡回するので走行距離も長く、寿命も短いといわれています。車齢が古くなってくると、故障防止のため震度7は作動させないこともあるそうです。
ユニークな地震体験車が日本で普及しているのは、地震常襲国であり防災教育に本腰を入れていること、コンパクトな起震装置を製造し特装車を作る技術力がある、という背景があります。
日本を訪れる外国人は地震に遭遇すると驚きますが、それ以上に日本人が冷静でパニックにならないことにも驚きます。日本の防災体制は世界最先端です。地震体験車の存在は、良い意味での地震慣れ(むやみにパニックにならない)や国土強靭化にも一役買っているといえます。
関東大震災を単に震度やマグニチュードの数字で知るだけでなく、数十秒だけでも「これはアカン」という体験を得ていることは、本物と遭遇した時の心構えが違ってきます。
地震体験車には「これから揺れます」「終わりです」とアナウンスがあります。しかし本番はいつ来て、いつ終わるかも分かりません。余震もあります。現実生活で「この揺れは実際に起こる」こと、「突然、自分の生活を襲ったらどうなるか」。地域イベントでは子供優先で大人は遠慮しがちですが、ぜひ体験して想像してみてください。
Writer: 月刊PANZER編集部
1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。
ばかばかしい