米空軍A-10、退役計画が廃案に 飛び続ける姿はしかし、「アメリカの苦悩」を象徴?

2016年1月、米空軍は攻撃機A-10の退役予定を無期限に延期する見込みであると報じられましたが、同年10月、改めてこの退役計画が廃案になったことが伝わってきました。しかし飛び続けるA-10の姿は、皮肉にもアメリカが抱える、とある苦悩を象徴しているといえます。

A-10、退役計画を退ける

 2016年10月24日(月)、アメリカの航空誌「エヴィエーションウィーク(Aviation Week)」は、2021年までに完全退役が予定されているアメリカ空軍攻撃機A-10C「サンダーボルトII」について、空軍はその計画を見直し、「無期限」に現役続行する方針であることを報じました。

 アメリカ空軍はこれまで、数度にわたりA-10Cの退役を計画しましたが、その都度キャンセルされています。今回も予定通りであれば、2018年には49機が退役、2021年までに258機すべてが現役を退く見込みになっていました。A-10Cはなぜ、何度も退役させられそうになりながらも、その都度、復活を果たしてきたのでしょうか。

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2015年9月、バルト海上空を飛行するアメリカ空軍のA-10「サンダーボルトII」(写真出典:アメリカ空軍)。

 最初期型のA-10Aがアメリカ空軍に就役を開始したのは、今からおよそ40年前、東西冷戦真っ只中の1977(昭和52)年でした。当時、アメリカを筆頭とする自由主義陣営は、敵対していたソ連軍に比較し、特に地上の兵数や戦車の数において大きく見劣りしました。A-10Aはそれを補うために味方地上軍と密接に連携し、ソ連陸軍を空中から爆撃、足止め・撃破する「近接航空支援」専門の攻撃機として誕生します。

 しかしその誕生当時から、A-10Aの存在は時代遅れの産物であると議論の的でした。味方地上軍の攻撃要請に素早く対応するため、戦場上空を低速で長時間飛行し続ける能力を重視したことから、速度が遅すぎて、高性能な地対空ミサイルを配備するソ連軍相手には役に立たないだろうと思われたからです。そしてその事実は、1991(平成3)年の湾岸戦争におけるA-10Aの大損害や、2014年のウクライナ内戦における、A-10と同種の攻撃機スホーイSu-25が立て続けに撃墜されていることからも証明されています。

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