「あれ? 日本っぽいぞ」 東京クラスの巨大都市にできた「初の地下鉄」既視感のワケは? でもマナーには厳しい!

ベトナム初の地下鉄「メトロ1号線(サイゴン線)」がホーチミン市で開業してから間もなく1年。日本の全面支援で完成した地下鉄は、いまや地元の人々にとって憧れの「映えスポット」となっています。

切符はQRコード、いきなりクレカもOK

 初乗り運賃は7000ドン(40円弱)で、券売機は紙幣かクレジットカードのみに対応しています。もっとも、ベトナムでは硬貨は流通していません。事実上1000ドン(約6円)が最低額紙幣なのです。

 券売機からは、「切符」に代わって、QRコードが記された紙がプリントアウトされます。このほか、一日乗車券など複数日にわたって乗車できる「お得なチケット」も用意されています。

 一般の方の多くはまだ不慣れなため、券売機の近くには必ず駅員が待機しています。利用者が困っていると、すぐに駆け付け丁寧にサポートしてくれます。券売機のそばには、対面のチケット販売窓口も設けられており、ここで駅員に「大人1枚」と、昔ながらの方法で乗車券を求める利用者も結構多いようです。

 改札は、やはり日本風の全自動式で、ここのリーダー(読み取り機)は、一日乗車券など複数日の連続乗車券専用です。

 QRコードは自動改札機の手前に立つポール状の機械の下部にあるリーダーで読み取ります。クレジットカードで直接乗車することも可能で、こちらはポール状機械の上部のリーダーで読み取る仕組みです。

 この結果、自動改札機には結果的にリーダーが3つも“乱立”してしまったため、不慣れな乗客が戸惑って、改札口には頻繁に長い列ができてしまいます。これを改善するため、改札口にも必ず駅員が数人待機し、「あなたはQRコードなのでこっちで読み取ってください」と優しく対応しているのは、とても好印象です。

 ホームにも駅員が何人も配置され、利用客の安全やマナー違反に注意を払っています。ホームドアの手前には赤いラインが引かれ、赤ラインから少しでもホームドアよりに足を踏み入れると、すぐに注意されます。

 電車は日中ほぼ7分前後の間隔で運行しており、ダイヤも想像以上に正確で非常に便利です。

 職員も電車に乗り込み、乗客のマナー違反に目を光らせているのも印象的です。子供が車内を走りながらふざけていると、職員が「危ないから走ってはダメだよ」と注意していました。

 地下鉄はベトナムの人たちにとって、まだ珍しく、土日には1号線を目当てに訪れる人たちも少なくありません。老若男女が駅の出入口や改札口で、思い思いにポーズを決めてスマートフォンで記念撮影しています。まさに「映え」スポットなのです。

 2030年には、ベンタイン駅から市北部のタンソンニャット国際空港方面に伸びるメトロ2号線の開業も予定されています。ホーチミン市名物の「スクーターの嵐」も、だいぶ緩和されるかもしれません。

【どこか日本風】「映えスポット化」しているメトロ1号線(写真)

Writer:

1962年、東京生まれ。法政大学文学部地理学科卒業後、ビジネス雑誌などの各編集長を経てフリージャーナリストに。物流、電機・通信、防衛、旅行、ホテル、テーマパーク業界を得意とする。著書(共著含む)多数。日本大学で非常勤講師(国際法)の経験もある。

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