「お客が明らかに減った」 東京からも近い旅先でなぜ? 魅力満載の「絶景&レトロ私鉄」で見た光景とは

静岡県富士市の工業地帯を結ぶ行き止まりのローカル線「岳南電車」。短い路線ですが、鉄道としては初めて「日本夜景遺産」に登録されるなど、見どころは豊富です。

特色ある駅が続く

 企業名を冠したジヤトコ前駅は、ホームにきれいな花壇も整備されていました。わずか400m先の吉原本町駅では多くの客が乗り降りします。さらに300m先には本吉原駅があり、列車はこまめに停車していきます。

 本吉原駅の1面2線のプラットホームとホーム上屋は国の登録有形文化財です。ホームは側面が間知石積みの技法で造られ、上屋はキノコ状の鋼管構造物が造形美を見せます。この辺りから進行方向左側に富士山も見え、魅力的な車窓が広がります。利用客の2割が定期外というのも頷けました。

 岳南原田駅も1面2線。地方鉄道としては珍しくそば屋が駅に併設されており、太めの麺のそばが安価に提供されていました。続く比奈駅も1面2線。以前は広大なヤードがありました。駅舎に鉄道模型店が入っており、レンタルレイアウトもあります。NゲージとHOゲージに対応したオリジナル商品も取り扱っていました。

 岳南富士岡駅も1面2線です。連続する交換駅で、1時間に最大3本というダイヤを可能にしています。この駅には「がくてつ機関車ひろば」があるので下車。電気機関車4両が保存されています。駅近くの踏切も貴重な「電鐘式踏切」で、独特の音色を響かせていました。

 駅のホームに戻ると8000形が入線してきました。7000形に似ていますが2両編成で、運転台の後ろは車いすスペースとなっています。

 赤渕川を越えると須津駅で、ここも1面2線。さらに須津川を越えて1面1線の神谷駅に停車。利用者がゼロということはなく、こまめに乗り降りが見られました。

 終点の岳南江尾駅には9000形が停まっていました。富士急行(現・富士山麓電気鉄道)で特急「ふじやま」に使われていた車両で、転換式クロスシートを装備しています。京王5000系の改造車の一つです。この車両には後日乗車しましたが、さすが元特急車。しっかりした座り心地の座席に感心しました。

 岳南江尾駅は東海道新幹線の高架が近くにあり、駅舎には糀の入った飲み物やアイスクリームを扱う「こころみち糀店」が入っています。ご主人に「売り上げはどうですか」と聞くと「『青春18きっぷ』(のルール)が変更されてから、お客様が明らかに減りました」とのこと。農作業をしつつ、お店は地域の憩いの場として維持されているそうです。

 青春18きっぷはルール変更により、1日単位の利用ができなくなり、3日または5日の連続使用が原則となりました。それゆえに、東京からも近く日帰りできる岳南鉄道のような路線に影響しているのかもしれません。

【写真】駅舎も眺めも変化に富む岳南電車を見る

Writer:

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロイラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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