「動いている限り凍えない。でも…」 ナポレオンもナチスも阻んだ“冬将軍”は現代兵器にも容赦なし 80年前と変わらない“アナログ対策”の現実

ロシア・ウクライナ戦争で戦場の様相を一変させたドローンですが、実は「低温」に弱いという弱点があります。ナポレオンやナチスドイツを苦しめた「冬将軍」は、現代のドローンにも厳しく、その対策は80年前と変わらないようです。

低温には「一定の利点」も

 反面、低温は一定の利点ももたらします。周囲温度が低いほど人体やエンジンの熱源は際立ち、赤外線(IR)センサーのコントラストは向上します。特に夜間は探知効率が上がる場合もあります。また、冬季は植生が減少し、遮蔽物が少なくなるため、目標露出度も増します。つまり「飛ばしにくいが、見つけやすい」という二面性があるのです。

 重要なのは、戦場全体の「ドローン密度」が下がる可能性です。現状のウクライナ戦線は、砲兵によるピンポイント砲撃と歩兵の小部隊による浸透を繰り返す膠着した状態です。

 砲兵火力はドローン観測と一体化しており、目標発見、座標補正、着弾修正のループが高速化したことで、少ない弾数でも高い効果を発揮するようになりました。しかしドローンの密度が下がれば、この観測ループは断続的になります。砲兵観測効率の低下や命中精度のばらつきを招き、火力発揮の効率に影響を及ぼす可能性があります。一方で、夜間に熱源探知を活用した砲撃が増えるなど、時間帯ごとの戦術重心が変わることも考えられます。

 また、戦場の「透明度」にも曇りが生じます。常時監視網は部分的に薄くなり少人数部隊による浸透戦術の活発化、局地的な戦線流動化が起こります。ドローンの密度変化は作戦テンポそのものを左右しかねません。

 ドローンは物理的兵器であると同時に、心理的抑圧装置でもあります。前線兵士は常に上空を気にしています。もしドローンの飛来頻度が低下すれば、心理的圧迫が緩和され、移動や近接行動への意欲が高まる可能性もあります。これは戦場行動の質を変える二次的効果を生みます。

 宇宙・サイバー・電磁波領域まで拡張されたマルチドメイン戦が語られる現代においても、自然条件は依然として強大な制約要因です。ナポレオン軍もナチスドイツ軍も阻んだ冬将軍は、21世紀のドローンにも容赦ありません。戦場を支配したかに見える「ゲームチェンジャー」も、冬将軍に対抗するためには使い捨てカイロという生活用品に頼らざるを得ない――この事実は、現代戦の現実を象徴しています。

 ニューヨークタイムズが取材した前線のウクライナ軍砲兵は、「人間もドローンも動いている限り、凍えない。でも止まった瞬間、固まってしまう」「誰かが凍えているとしたら、そいつは働いていないということだ」と語ります。

 戦場を支配するのは、依然として自然です。

【写真】雪原から射出されるロシア軍ドローン

Writer:

1975(昭和50)年に創刊した、50年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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