「交通も大手デベロッパー」の時代なのか? 国内民間初の「フル電動航路」を繰り出す「三井不動産」の本気度
国内初となる民間企業によるフル電動旅客船の定期航路が2026年4月にスタート。運営するのは交通事業者ではなく、三井不動産です。東京の新たな水上交通網を構築する壮大な計画の一環です。
狙うは「空港アクセス」!?
「&CRUISE」として日本橋―豊洲航路に投入される「Nihonbashi E-LINER」は、大洋電機(千代田区)が設計し、エルモ(三重県伊勢市)が組み立てを行いました。全長は17mで総トン数は17トン。定員は乗員2人と旅客60人です。
小型船舶の領域では、国内最大級となる約300kWhのリチウムイオン電池を搭載。発電機などの内燃機関を船から全廃することで、航行中のCO2(二酸化炭素)排出ゼロを実現しました。電動旅客船は2025年3月に高知県営渡船で導入されていますが、民間企業が運営する航路への投入は「Nihonbashi E-LINER」が初となります。
市ノ澤上席統括は「『&CRUISE』を通じて三井不動産として社会貢献を行っていく意味で、高い環境性能を備えた。環境負荷を抑え、生態系に配慮した持続可能な移動手段となっている」と話します。
給電設備は、ららぽーと豊洲内に設けられており、再生可能エネルギーによる充電を行うことで実質的なゼロエミッション船となっています。電動船の導入に当たってはこうしたインフラ整備が大きな課題となっていますが、自社グループが開発して運営している商業施設の敷地と設備を活用できるのは、三井不動産の大きな強みといえるでしょう。
また、「Nihonbashi E-LINER」の内部は従来型の水上旅客船とは大きく異なる座席配置となっており、船体の大きさに比べて開放感を感じる内装となっています。
市ノ澤統括は「仕事をしながらの移動や子供を連れての乗船など、さまざまな楽しみ方や過ごし方ができるよう、教室形式の座席配置ではなく、フリースタイルの座席配置を採用した。立ったり座ったりしゃがんだり、思い思いに過ごすようなレイアウトとなっている」と話しています。
「Nihonbashi E-LINER」は3月に2隻目が竣工し、東京都舟運活性化事業費補助金を受けて4月から2隻体制で運航を始める計画。これまでの実証事業とは異なり、普段使いできる公共交通機関を目指しているため、30分間隔での定期運航を行う予定です。
なお、「日本橋リバーウォーク」では舟運を活用し、海から羽田空港へ直接アクセスすることも掲げています。より広範囲の舟運ネットワークの整備が期待できるでしょう。
こうしたデベロッパーの“水上”への進出は、競合でも動きがあります。野村不動産も芝浦・日の出エリアを拠点とした舟運事業に乗り出しており、2026年にはラグジュアリー体験を提供する「BLUE FRONT SHIBAURA」オリジナル船の運航を始める予定です。
これまで東京の水上交通といえば、浅草やお台場といった観光地を結ぶ水上バスが中心でした。今後は大手デベロッパーを中心とした新しい交通網の構築が進んでいく可能性があります。
Writer: 深水千翔(海事ライター)
1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。




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