「飛鳥II」世界一周復活へ しかし課題も 高騰する料金、不安定な世界情勢

海賊出現、それでも通りたい地中海

「飛鳥II」も2010(平成22)年、インド洋から地中海へ直接向かうスエズ経由のコースを断念しました。南アフリカを経由するコースや世界一周を諦め太平洋、南極、南アメリカを周遊する旅などを設定して、治安の改善を待ったのです。このあいだ、日本人に一番人気のある地中海へ行くために、南アフリカ経由ののち北上し、ジブラルタル側から地中海に入るといったトリッキーなコースを選択したこともありました。

 また2015年に催行された世界一周クルーズでは、スエズ運河は通航するものの乗客を乗せて航行することを断念し、この区間は陸上ツアーと組み合わせるなど苦心したコース設定をしました。ところがこの試みは、むしろ中東紛争の深刻化で、陸上ツアー自体を断念することになり、乗客を「飛鳥II」に乗せて紅海を無寄港で突っ走るというコース変更を強いられることになりました。このことは世界一周の安全性に対する疑念も呼ぶことになり、この年をもって、世界一周クルーズの募集は停止されてしまいます。

 しかし、郵船クルーズが世界一周クルーズを断念した2015年あたりから、国際的な警備協力もあって海賊は厳しく取り締まられるようになり、最近(2017年1月現在)ではほとんど出現しなくなりました。各国のクルーズ会社も世界一周クルーズを徐々に再開し、郵船クルーズも前述のように、2018年の世界一周クルーズを実施することに決めたのです。

「飛鳥」および「飛鳥II」による世界一周への参加者の平均年齢は、1996(平成8)年当初は67歳でしたが、2015年には71歳まで上昇しています。郵船クルーズはこれについて、「定年年齢が上がって来たことや、リピーターが増えた」ことなどを理由に挙げています。

 一方、ある旅行会社は今回の「飛鳥II」による世界一周再開について、「2015年の中止で世界一周クルーズ参加を諦めていた団塊の世代の齢回りに、なんとか間に合いそう」と、まだまだ元気な「前期高齢者世代」からの期待が多いことを明らかにしています。

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