空港の地上支援スタッフ、どう育成? シミュレーター登場で訓練期間短縮のワケ(写真28枚)

飛行機の発着に欠かせない空港のグランドハンドリング(地上支援業務)ですが、そのスタッフ育成のためのシミュレーターが登場しました。どのようなものなのでしょうか。

百聞は一見にしかず? 訓練期間激減のワケ

 トーイング・トラクターを使って航空機を誘導路に押し出す「プッシュバック訓練」は、通常であれば42日間、のべ3か月程度の訓練期間を要していましたが、シミュレーター導入によって24日間、のべ1か月ほどで訓練を終了することができるそうです。乗客が航空機から乗降するパッセンジャー・ボーディング・ブリッジの操作訓練では、21日間、のべ2か月だった訓練期間が13日間で訓練終了となります。

 そしてさらなる導入のメリットとして、イレギュラー対応力の強化があります。従来の訓練においては実物の航空機や特殊機材を使用するため、そうしたイレギュラーなトラブル対応に関しては教官の体験などを聞く座学のみでしたが、シミュレーターでは「アクシデントモード」によって、実際に起こりうるアクシデントを再現することができ、それによって何度も訓練することが可能となっています。

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緊急停止を無視した結果、機体が接触事故を起こしてしまう。
アクシデントが起こると、シミュレーターの画面が赤く点滅。
操作ミスによりトーイングバーが破損。

 シミュレーターの開発にあたっては社内でプロジェクトチームを立ち上げ、何度も開発先と協議しながら完成させたそうです。実際のハンドリング作業には、数値化できないような「ベテランのコツ」というものがあるそうですが、シミュレーターでは基準となる作業の感覚を身に付ける訓練に重点を置くといいます。シミュレーターの感覚は、ベテランスタッフが操作しても実際の現場と変わらない距離感や動作性だということで、より現場感覚に近い訓練が可能となっているそうです。

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シミュレーターにも登場したWT車、WT500E。
パッセンジャー・ボーディング・ブリッジが離れプッシュバック開始。
プッシュバックされるボーイング777-200機、松山行き593便。

 シミュレーターの発達によって、パイロットの実機訓練の大部分がシミュレーターへ移行したように、ハンドリング作業もシミュレーターに移行しつつあるのが興味深いところです。

 ANAエアポートサービスでは、シミュレーターを使った訓練は10月初旬から開始する予定となっています。

【了】

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専門誌を中心に、航空機の取材、撮影を行うライター、写真家。国内外を問わず世界各地の空港やエアショーなど取材。航空機以外にも野鳥、アウトドア、旅行など幅広いジャンルの取材を行っている。

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