メーター見ず速度ピタリ的中! 運転士の職人技「速度観測」を取材 東京メトロ(写真12枚)
メーターを隠して走りながらその速度を当てるという運転士の職人技「速度観測」を、東京メトロ南北線で取材。いったい運転士はどうやって、速度をピタリと当てるのでしょうか。ただ、電車運転ゲームは難しいそうです。
速度計が壊れた場合などを想定
運転台の速度計を隠した状態で走る、東京メトロ南北線の列車。ある瞬間で、指導員が運転士に現在の速度を聞きました。
運転士「42km/hです!」
指導員が速度計の覆いをとって確認すると、ピッタリ正解。しかも……。
指導員「ブレーキ4ステップ!」(注:「4」の強さでブレーキをかけて)
指導員「オフ!」
指導員「3ノッチ!」(注:「3」の強さでアクセルを踏んで)
指導員「オフ!」
指導員「ブレーキ4ステップ!」
指導員「オフ!」
指導員「4ノッチ!」
指導員「オフ!」
指導員「何km/h?」
運転士「42km/hです!」
このように、指示されたいくつもの操作をしたあとの正解。なお、「ノッチ」はクルマでいうアクセルで、数字が大きいほど、アクセルやブレーキを深く踏むイメージです。
これは「速度観測」と呼ばれるもので、電車の運転免許(動力車操縦者運転免許)取得時にチェックされる項目。速度計が壊れた場合でも安全に運行することなどを想定したもので、東京メトロは1km/hもずれない運転技術の習得を目標にしているといいます。
「トンネル内の照明が流れる速さや、レールのつぎ目の音などを参考に、目や耳 振動で速度を測っています」(東京メトロ 南北線乗務管区 王子神谷運転事務室 運転士 奥谷龍一さん)
ちなみに奥谷運転士によると、体で速度感をつかみづらいため、電車運転ゲームは難しいそうです。
【了】
Writer: 恵 知仁(鉄道ライター)
鉄道を中心に、飛行機や船といった「乗りもの」全般やその旅について、取材や記事制作、写真撮影、書籍執筆などを手がける。日本の鉄道はJR線、私鉄線ともすべて乗車済み(完乗)。2級小型船舶免許所持。鉄道ライター/乗りものライター。
この、日本ではありふれた、しかし世界で見れば化け物じみた能力は、いつまで続くのだろうか。